著者
椎名 勇
出版者
東京理科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1994

エステル合成に代表される脱水縮合反応は有機合成化学において最も基本的な反応の一つであり、古くから数多くの手法が開発されている。しかし、従来知られている脱水縮合反応では、一方の試薬を他方の試薬に対して大過剰に用いる平衡移動反応による手法や、反応温度を高め系内で生じる水を系外に取り除くなどの操作が必要であり、現在でも当量のカルボン酸とアルコールから収率よくエステルを簡便に得る方法は数少ない。(1)筆者は、まず、ルイス酸触媒およびρ-トリフルオロメチル安息香酸無水物の存在下、カルボン酸シリルエステルとアルキルシリルエーテルを室温で反応させると対応するエステルがほぼ定量的に得られることを見いだした。(2)また、他の求核剤を用いて反応を行うことを試み、アルキルシリルスルフィド、フェニルシリルエーテルまたは求核性の低い置換アニリンを求核剤に用いた場合にも対応する活性チオールエステル、活性フェノールエステルまたはアニリドが収率良く得られることを明らかにした。(3)分子内環化反応に適用した結果、ω-シロキシカルボン酸シリルエステルを用いる効率的なマクロライド合成法を開発することができた。(4)これらの反応をさらに簡便かつ有用な手法とするため、遊離のカルボン酸とアルコールをケイ素誘導体に導くことなく一挙にエステルを得る触媒的反応の開発を目的として検討したところ、ビス過塩素酸ジクロロチタンとクロロトリメチルシランから系内で調整される触媒の存在下で円滑に反応が進行し、対応するエステルがほぼ定量的に得られることを明らかにした。(5)上記反応を分子内反応に適用したところ、ビストリフルオロメタンスルホン酸ジクロロチタンとクロロトリメチルシランから系内で調製される触媒を用いることにより、大環状マクロライドが高収率で得られることを見い出し、さらにこの反応を利用し、天然マクロライドであるレシファイオライド類縁体リシネライディック酸ラクトンを92%の収率で得ることができた。