著者
元木 貢 佐々木 健 楠木 浩文 水谷 澄
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.63-69, 2008-10-31

1.ウエストナイル熱等の昆虫媒介性疾病が日本に侵入したときに備えるため,家屋周辺のオープンスペースを対象とした蚊成虫対策を検討した.2.屋外開放環境下に薬剤処理する方法として,動力噴霧機を用いた低濃度多量処理およびULV機による高濃度少量処理を採用した.薬剤は,前者にクロルピリホスメチル10%乳剤を,後者にはフェノトリン10%ULV用乳剤を選定した.3.クロルピリホスメチル10%乳剤を用いた低濃度多量噴霧の用量は,250倍と500倍希釈液・250ml/m^2処理が,フェノトリン10%乳剤のULV噴霧は,2〜4倍液・2ml/m^2処理が適した用量であることがわかった.4.同時に検討した植物に対する薬害試験は,2種の観葉植物の鉢植えを供試した.殺虫剤製剤に対し敏感に反応することが考えられたスパティフィラムは,前述した希釈倍率の高い用量区でも,若干の影響が認められた.5.この結果,実際に屋外開放環境下で噴霧処理する際は,観葉植物などに対し,できる限りあらかじめ被覆すること,もしくは,噴霧に暴露されない安全な場所に移すことを考慮すべきである.6.低濃度多量処理は作業性に若干問題があり,ULV処理はコスト高になることがわかった.どちらの方式を採用するかは,実施場所の地形,対象面積および水源の有無などにより選択する必要がある.しかしながら,公園や住宅地など広域に薬剤処理する場合には,大型機器が必要である.