著者
城ヶ原 貴通 小倉 剛 佐々木 健志 嵩原 建二 川島 由次
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.29-37, 2003 (Released:2008-06-11)
参考文献数
24
被引用文献数
12

沖縄島北部やんばる地域におけるノネコ(Felis catus)および集落におけるネコの食性と在来種への影響を把握するために,糞分析による食性調査を実施した.その結果,ノネコおよびネコの餌動物は多くの分類群にわたっていた.林道においてノネコは,昆虫,哺乳類,鳥類および爬虫類を主要な餌資源としていることが推察され,集落においては,人工物および昆虫が主な餌資源となっていることが推察された.ノネコの餌動物には多くの在来の希少動物が含まれており,沖縄島固有種で国指定特別天然記念物であるノグチゲラ(Sapheopipo noguchii)をはじめ8種の希少種がノネコの糞より検出された.やんばる地域に生息するノネコおよび集落に生息しているネコは,沖縄島の生態系において陸棲動物のほとんどを捕食できる高次捕食者として位置づけられると考えられた.今後,やんばる地域の生態系を維持するためには,ノネコの排除が必要であり,さらに供給源としての飼いネコの遺棄を防ぐ県民への啓蒙普及活動が不可欠である.
著者
平塚 広 竹野 健次 佐々木 健
出版者
一般社団法人 日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.105-111, 2004-06-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
7

鉄瓶は古くから茶器として利用されて来たが, 最近, 粗悪で安価な鉄瓶が出回り, 市場が混乱している.我々は鉄瓶の品質を科学的に解明する一つの方法として, 加熱の際での水質変動を追跡し, さらに味との関係の検討を行った.南部製と外国製の鉄瓶に水道水を入れ, LPGガス加熱調理器で加熱し水質変動を追跡した.南部鉄瓶 (三笠および丸南部) の場合では水質に変化はそれほど認められなかったが, 外国製の鉄瓶では硬度, pH, 重炭酸イオンの上昇などの急激な水質変化が認められた.すなわち, 外国製のある鉄瓶では30分加熱で硬度が19.00mg/Lから53.00mg/L, pHが7.00から9.40, 重炭酸イオンは14.00から30.40mg/Lに変化した.さらに南部, 外国製双方の鉄瓶で沸騰させたお湯で, 抹茶を立て成分分析をしたところ, 南部鉄瓶では抹茶のアミノ酸溶出が外国製に比べ速やかであることが確認された.
著者
築島 隆尋 高野 政晴 佐々木 健 井上 健司
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.8, no.6, pp.699-711, 1990-12-15 (Released:2010-08-25)
参考文献数
11
被引用文献数
4 9

This paper proposes a general theory for kinematics and dynamics of wheeled mobile robots (WMRs) . This study has two features: 1) The proposed method can deal with various WMR system ranging from typical three or four-wheeled mobile robot to multi-WMR systems where multiple WMRs are connected by joints. A WMR is regarded as a planar linkage mechanism with several ends: wheels correspond to the ends. Generally, a WMR system has active joints such as steering axis, passive joints such as casters and couplers, and driven/non-driven wheels. A model of WMR system called tree structure link covering these configurations is proposed. 2) This theory deals with kinematics and dynamics of WMR including slip of wheels. WMR dynamics is derived regarding frictional force between wheels and the ground as an external force which is a function of the slip speed. When no slip is assumed in wheels, WMR's motion is expressed by kinematics. In this manner, the proposed method is applied systematically on the kinematics when slip can be neglected and the dynamics when slip exists. Furthermore, velocity input dynamics is proposed which gives the motion of WMR when the velocity commands are inputs to active joints and wheels under the condition that wheels slip.
著者
竹内 正樹 佐々木 健司
出版者
日本頭頸部癌学会
雑誌
頭頸部癌 (ISSN:13495747)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.293-299, 2008-10-25 (Released:2008-11-11)
参考文献数
12
被引用文献数
1

頭頸部領域の手術では,露出部である顔面に切開を加えることも多いため,術後瘢痕を目立たなくする整容的な配慮が必要となる。切開線設定は,(1)皺線(Kraissl線)に沿わせること,(2)毛髪線や外鼻,耳介,口唇など輪郭線のある部位では,その境界線に一致させることが原則である。皮膚縫合に際しては,両方の創縁から均等に真皮を引き寄せて創縁の緊張をとる真皮縫合と縫合糸痕を残さない配慮をした皮膚表面縫合を行う。切開から縫合までの過程では,常に皮膚を愛護的に扱う操作を心がける。抜糸後はテープによる減張固定と遮光を行い,変化する瘢痕の経過観察を怠らないことが重要である。
著者
菅野 靖幸 加藤 泰之 山内 秀昂 陣野 太陽 伊達 勇祐 佐々木 健一 清水 篤 木山 宏
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.288-290, 2020-09-15 (Released:2020-09-30)
参考文献数
18

症例は65歳男性.僧帽弁位機械弁のためワーファリンを内服していたが,エドキサバンに変更された3カ月後に急性心不全を呈し当院に搬送された.透視下での機械弁開放制限と僧帽弁圧較差の上昇を認め,血栓弁と診断し緊急再僧帽弁置換術を実施した.術後は良好に経過し,合併症なく術後10日目に自宅退院となった.機械弁使用症例に対しては,ワーファリン使用の必要性についてかかりつけ医や患者本人および患者家族への十分な啓蒙が必要である.
著者
佐々木 健 勝又 英明
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.79, no.701, pp.1567-1575, 2014-07-30 (Released:2014-09-30)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

The following information was revealed about the reconstruction of main halls. 1. The main reasons for reconstruction of former main halls were deterioration, natural disasters, upgrading of functions and war. 2. The structure of the main hall was wooden in 80%. The use of non-wooden structures peaked in the sixties, but wooden structures have increased again since the eighties nationwide. 3. Reconstruction of main halls could be categorized into those attributable to deterioration, disaster, upgrading functions and no reconstruction. 4. Passing down over many generations and placing importance on tradition will be a guideline for reconstructing the main hall.
著者
城ケ原 貴道 小倉 剛 佐々木 健志 嵩原 建二 川島 由次
出版者
日本哺乳類学会
雑誌
哺乳類科学 (ISSN:0385437X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.29-37, 2003-06-30
被引用文献数
6 3

沖縄島北部やんばる地域におけるノネコ(Felis catus)および集落におけるネコの食性と在来種への影響を把握するために,糞分析による食性調査を実施した.その結果,ノネコおよびネコの餌動物は多くの分類群にわたっていた.林道においてノネコは,昆虫,哺乳類,鳥類および爬虫類を主要な餌資源としていることが推察され,集落においては,人工物および昆虫が主な餌資源となっていることが推察された.ノネコの餌動物には多くの在来の希少動物が含まれており,沖縄島固有種で国指定特別天然記念物であるノグチゲラ(Sapheopipo noguchii)をはじめ8種の希少種がノネコの糞より検出された.やんばる地域に生息するノネコおよび集落に生息しているネコは,沖縄島の生態系において陸棲動物のほとんどを捕食できる高次捕食者として位置づけられると考えられた.今後,やんばる地域の生態系を維持するためには,ノネコの排除が必要であり,さらに供給源としての飼いネコの遺棄を防ぐ県民への啓蒙普及活動が不可欠である.
著者
泉 健司 加納 一三 佐々木 健二
出版者
日本鱗翅学会
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.155-162, 1984
被引用文献数
1

従来,翅の形態の比較検討は数個所の測定値の相互比などにより行われてきた.筆者らはカラスアゲハの翅形の地理的変異を比較検討する目的で前後翅9部位の長さを測定し,さらに理論性と客観性を加える目的で主成分分析を行った.その結果,第1より第4主成分(Z_1〜Z_4)に意義のあることを確かめることができた.Z_1は大きさを表わす主成分で,台湾産の集団は小型であることがわかった.また他の地域集団間では,差異はほとんど認められなかった.形を表わすZ_2〜Z_4では地域差が認められた.Z_2は前翅の細長さを,Z_3は後翅の細長さを,そしてZ_4は後翅の幅を表わす主成分であった.Z_2とZ_3を座標軸として得られた個体の散布図をみると,地理的に近接する地域集団は互いに似た形態を示すことが多い.しかし,中国の上海,韓国のソウル,済州島,日本の本州,中之島,および台湾から得られた個体は,F(後翅基部から第4脈末端までの長さ)が長く後翅が比較的細長い傾向がみられ,前翅は細長いものからずんぐりしたものまであったのに対し,奄美より西表にかけての島娯群,紅頭喚および八丈島から得られた個体は,いずれもC(前翅翅端から第1b脈末端までの長さ)とFが短く,前後翅ともにずんぐりとした傾向を示すことがわかった.
著者
佐々木 健人 小檜山 雅之
出版者
JAPAN ASSOCIATION FOR EARTHQUAKE ENGINEERING
雑誌
日本地震工学会論文集 (ISSN:18846246)
巻号頁・発行日
vol.7, no.6, pp.31-47, 2007 (Released:2010-08-12)
参考文献数
34
被引用文献数
3 1

住宅購入時の意思決定を支援する耐震等級の説明に関し, 被害発生確率を用いた説明方法が有効であることをアンケート調査により検証した。調査対象は横浜市・川崎市・東京都23 区在住の持ち家志向を持つ30代・40 代の市民とし, 759 人の有効回答を得た。調査項目は地震発生リスク認知と耐震性能の選好性に関する項目等とした。集計結果から, 回答者が地震発生リスクを過大に認知していること, 求める耐震性能にばらつきがあることなどが明らかになった。また, 耐震性能の説明として震度の大きさに対する被害発生確率の提示が有効であること, 耐震等級ごとの地震被害リスクとコストの情報を提供しリスクを過大視するバイアスを除去したのちも高い耐震性能を要望する傾向などが確認された。
著者
二宮 周平 田中 通裕 村本 邦子 渡辺 惺之 櫻田 嘉章 中野 俊一郎 佐上 善和 渡辺 千原 山口 亮子 松本 克美 立石 直子 松村 歌子 廣井 亮一 酒井 一 織田 有基子 長田 真理 高杉 直 北坂 尚洋 黄 ジンティ 加波 眞一 樋爪 誠 中村 正 団 士郎 佐々木 健 松久 和彦
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

家事紛争の中でも未成年の子のいる夫婦の紛争は、当事者の葛藤の程度に応じて3段階に分けることができる。葛藤が低い場合には、情報の提供や相談対応で、合意解決の可能性があり、中程度の場合には、家裁の家事調停において、調停委員や家裁調査官の働きかけによって合意解決の可能性がある。DVや児童虐待など高葛藤の場合には、家裁の裁判官が当事者を説得し、再度の和解や付調停により合意解決を図るとともに、監視付き面会交流など公的な場所、機関によるサポートや養育費の強制的な取り立てなど裁判所がコントロールする。当事者の合意による解決を促進する仕組みを葛藤の段階に対応して設けることが必要である。
著者
佐々木 健志
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.283, 2004 (Released:2004-07-30)

沖縄島北部の山地には、イタジイを優占種とするオキナワウラジロガシ、イスノキなどからなる常緑広葉樹の森林が広がっている。このうち、イタジイやマテバシイ、オキナワウラジロガシなどのブナ科植物が生産する大量の堅果は、様々な動物の重要な餌資源となる一方で、動物による堅果の加害や散布がこれらの樹木の更新や分布の拡大に様々な影響を与えている。今回、ネズミ類の巣穴調査中に偶然発見された、サワガニ類によるブナ科堅果の貯食行動に伴う種子散布の可能性について報告する。 当地域には5種類のサワガニ類が生息しており、水への依存度の違いにより活動空間の異なることが知られている。このうち、林床で活動することが多いオオサワガニの5例と主に水辺で活動するオキナワミナミサワガニの1例で、イタジイ堅果(1例のみオキナワウラジロガシ)の巣穴での貯食行動が確認された。両種とも、巣穴は沢の流底から0.4_から_5m離れた谷の斜面部に直径葯10cm、長さ40cm程の坑道が水平に掘られていた。ファイバースコープで巣穴内の個体が確認できた6例中、雌雄の識別ができなかったオオサワガニの1例を除き全てメスで、体サイズも40mm以上と全ての個体が成体と考えられた。このことから、堅果の貯食行動は高栄養の餌を必要とする産卵前のメスに特有の行動である可能性が高い。巣穴内の堅果は、底の一部を残して種皮ごと食べられるか、縦方向に割られ中身のみが食べられるかで、同様の採餌痕は室内実験でも確認された。食べ終わった種皮は、巣穴の入り口近くに多く貯められており、各巣穴で63_から_168個の堅果が確認された。また、これらの中には未食の堅果が1_から_22個含まれており、一部に発芽が見られたことから、サワガニ類が、種子が定着しにくい谷の上部斜面への種子分散を行っている可能性が示唆された。
著者
佐々木 健一 福井 寿啓 真鍋 晋 田端 実 高梨 秀一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.85-89, 2012-03-15 (Released:2012-03-28)
参考文献数
10

症例は47歳男性.1カ月ほど持続する労作時息切れを主訴に近医を受診した.胸部X線にて心拡大を認めたため心エコー検査を施行した.左房内に充満する腫瘤陰影を認めた.当院に精査加療目的で緊急搬送となった.CT検査にて,腫瘍は左房後壁から発生し,肺静脈流入部から僧帽弁直上まで左房内を占拠する不整形腫瘍であった.僧帽弁狭窄症の血行動態を呈し,急性左心不全の状態であったため,腫瘍のvolume reduction目的に緊急的に左房内腫瘍切除手術を施行した.経中隔にて左房内に到達した.腫瘍は表面平滑で不整形であった.左房内を占拠しており,後壁から頭側にかけて壁内浸潤しており完全切除は不可能であったため,可及的に切除する方針とした.術直後より血行動態は著明に改善し,術後10日目に軽快退院した.病理結果は,pleomorphic rhabdomyosarcomaであったため,術後3週間後から他院にて化学療法(シクロフォスファミド+ビンクリスチン+アドリアマイシン+ダカルバジン)を開始した.術後4カ月目のCTに腫瘍の縮小を認めたが,術後5カ月目に心房性不整脈にて入院加療となった.術後9カ月目には,残存腫瘍が増大し,術後11カ月に心不全にて死亡した.Pleomorphic rhabdomyosarcomaは頻度の低い疾患であり,今回の治療方法と経過について文献的考察を加え報告する.