著者
上村 清 倉井 華子 忽那 賢志
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.49-55, 2020-09-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
33

イノシシが引き起こす人獣共通感染症のうち,ウイルス病である日本脳炎,SFTS,狂犬病,E型肝炎,豚インフルエンザ,ニパウイルス感染症,細菌・リケッチア病である日本紅斑熱,寄生虫病である回虫症,旋毛虫症,猪オンコセルカ症,顎口虫症,肺吸虫症,有鉤条虫症,クリプトスポリジウム症について解説した.イノシシから感染する人獣共通感染症が多くあるので,ジビエ料理には衛生管理が欠かせない.
著者
渡辺 護
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.17-23, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
15
被引用文献数
5

富山県の立山山麓で1995年からクサギカメムシとスコットカメムシの越冬飛来の観察してきた.今回,クサギカメムシおよびスコットカメムシ飛来数と降雪量の関係,クサギカメムシ飛来数とスギ花粉飛散量との関係,さらに両種の飛来数に影響を及ぼす気象要素との関係について検討を行った. クサギカメムシの飛来数と降雪量には関係はみられなかったが,スコットカメムシでは飛来数が多いと降雪量が多くなることが示唆された.また,クサギカメムシの飛来数を春のスギ花粉飛散量で予測することは出来なかった. クサギカメムシの飛来数が多い年は交尾産卵期(5月上旬〜6月下旬)と幼虫発育期(5月下旬〜8月上旬)の最高気温が高い傾向が示された.スコットカメムシの飛来数が多い年は羽化期(8月下旬〜9月中旬)の降水量が少ない傾向,飛来期(10月下旬〜11月中旬)の風速が弱い傾向が示された.
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.73-76, 2007
参考文献数
16
被引用文献数
3

2006年7月から10月に東京都港区において粘着トラップによるゴキブリの捕獲調査を行った.屋外にある自販機の下に粘着トラップを設置した.クロゴキブリとチャバネゴキブリが捕獲されたが,他の種類のゴキブリは捕獲されなかった.10月にはクロゴキブリの大型と小型幼虫が増加した.
著者
林 幸希
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.33-34, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
5

2019年7月12日と同13日に宮崎県で初記録となるフタホシモリゴキブリを採集した.本種の日本国内における報告は3例目となる.
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.101-106, 2013-11-15

2011年6〜12月に,東京都港区にある超高層ビルの公開空地と都市公園の樹木の樹洞において,粘着トラップによるゴキブリの捕獲調査を行った.両方の場所でクロゴキブリ成虫と幼虫が6〜11月まで捕獲された.捕獲数における幼虫の比率は,公開空地では90.5%,公園樹木では73.7%であった.公園樹木ではヤマトゴキブリ成虫と幼虫も捕獲されたが,その捕獲数はクロゴキブリよりも少なかった.公開空地や公園緑地の植栽はクロゴキブリやヤマトゴキブリの生息環境として重要である.
著者
橋本 知幸
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.113-115, 2013-11-15 (Released:2019-04-10)
参考文献数
8

吸血源の周囲にディートを残留処理した時の,トコジラミの吸血阻止効果を室内試験により評価した.供試虫としては,殺虫剤感受性系統(帝京大系)とピレスロイド抵抗性系統(千葉系)を用いた.その結果,対照区における2日間の平均吸血率は,帝京大系と千葉系がそれぞれ,58.6%と86.8%を示した.一方,処理区ではディートの薬量が増加するほど吸血率は低くなった.処理区の10 g/m2では,帝京大系と千葉系の2日間の平均吸血率がそれぞれ,2.1%と17.7%にとどまり,一定の吸血阻止効果を発揮した.本研究の結果から,ディートの肌以外の面への残留処理によって,トコジラミの吸血行動を防ぐ可能性が示唆された.
著者
山内 健生 有馬 知佳
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.5-6, 2016-04-20 (Released:2017-11-06)
参考文献数
8

2015年8月1日の午前5時46分頃,兵庫県豊岡市日高町東河内(標高約400 m)で,アスファルトの舗装道路上を行進するクロバネキノコバエ科幼虫の集団(armyworm)が発見された.クロバネキノコバエ科幼虫の隊列は,長さが約20 cmで,西から東の方向へ向かって進んでいた.そこで,スマートフォンを用いて16秒間の動画と静止画1枚を撮影した.虫体の採集は行わなかったため,クロバネキノコバエ科幼虫の種名などの詳細は不明である.我が国では,armywormは,これまで神奈川県以東で確認されていたが,本報告により西日本で初めて確認された.
著者
高橋 知代 久志本 彩子 小長谷 貴昭 田原 雄一郎
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-4, 2006-06-30
参考文献数
7

Biodegradable packaging buffers made from corn or wheat starch have replaced plastic foambuffers as packaging materials. The German cockroach, Blattella germanica, the smoky-brown cockroach, Periplaneta fuliginosa, and the brown-banded cockroach, P. brunnea consumed the biodegradable packaging buffers as food when they were kept in an arena with water, yet they hesitated to eat a urethane buffer. The cockroaches could survive and most of them could propagate for generations feeding on packaging buffer. Therefore, the biodegradable packaging buffers should be removed from factories immediately to avoid cockroach infestation.
著者
中野 敬一
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.95-99, 2019-09-25 (Released:2020-09-25)
参考文献数
12

2017年7月上旬から10月上旬に,東京都港区芝にある14階建てマンションの6階のベランダと室内で,粘着トラップとマーキングをした再捕獲法によるクロゴキブリの捕獲調査を行った.マーキング調査の結果,ベランダで5個体が再捕獲されたが,室内では捕獲されなかった.粘着トラップにより,ベランダで92個体が,室内で9個体が捕獲された.植木鉢周辺で捕獲数が多かった.室内では幼齢幼虫が居間を中心に捕獲された.
著者
宮ノ下 明大 今村 太郎 古井 聡 曲山 幸生
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.57-60, 2020-09-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

唐辛子製品におけるノシメマダラメイガの発育について,28℃,相対湿度70%,日長:16L8Dの条件で調べた.供試試料として唐辛子は,ホール(無傷),横半分に切断,輪切りを用い,一味唐辛子はそれぞれ製造元の異なる5製品を用いた.試験は,孵化幼虫2個体を各唐辛子2.5 gに投入し,羽化までの発育日数,羽化率,成虫生体重を記録し,10~15回繰り返した.ホール唐辛子(無傷)では発育しなかった.横半分に切断したものでは,羽化率25%,平均発育日数(平均値±SE)は65.0±2.9日であった.輪切りでは,羽化率90%,平均発育日数は35.0±0.5日であった.平均成虫生体重は,横半分に切断したものに比べ,輪切りでは重くなった.これらの結果は,幼虫の発育に唐辛子の形状や硬さが影響を与えることを示している.一味唐辛子では,4製品では平均発育日数は42.5~48.3日の範囲に含まれ有意差がなかったが,1製品では81.0±10.2日で,他と比べ有意に長かった.乾燥唐辛子の揮発性成分には,昆虫に対する殺虫,忌避効作用が知られているものもある.これらの結果は,唐辛子の揮発性成分量は製品毎に異なり,幼虫の発育に影響を与える可能性を示している.
著者
吉澤 聡史
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.29-32, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
17

岡山市内において水分を含んだたばこの吸い殻に双翅目昆虫の幼虫が発生していることが発見された.これらの幼虫を室内(15〜20°C)で飼育した結果,5種の成虫が羽化してきた.これら5種の同定結果はナガサキニセケバエCoboldia fuscipes (Meigen)(ニセケバエ科),ナミクロコバエDesmometopa varipalpis Malloch(クロコバエ科),クロヒメイエバエFannia prisca Stein(ヒメイエバエ科),ワラベヒメイエバエF. pusio (Wiedemann),トウヨウクキイエバエAtherigona orientalis Schiner(イエバエ科)であった.
著者
緒方 一喜 渡辺 登志也 宮本 和代 川口 正将 豊田 耕治 小曽根 努 松岡 宏明 白石 啓吾 森岡 健志 吉岡 照太 鈴木 雅也 千保 聡 美馬 伸治 中村 友三 足立 雅也 芝生 圭吾 池田 文明 玉田 昭男 田中 生男 石原 雅典
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.51-58, 2012-11-25 (Released:2019-04-10)
参考文献数
18
被引用文献数
2

ヒトスジシマカ成虫に対する殺虫剤による防除実地試験を東京の寺院の庭で2010年の夏に実施した.5%ペルメトリン,10%フェノトリン,7%エトフェンプロックス水性乳剤の50倍希釈液を背負式噴霧機によって50 ml/m2の量で草むら,植木,空地に噴霧した.スイーピング法,ドライアイストラップによる捕集密度の変化,配置した成虫の死亡率から効果を評価した.結果として,ペルメトリンでは約10日間,他の2剤では4~5日間は成虫飛来密度が0近くに減少した.その違いは,処理面積の違いに基づくものであろうと考えた.その後密度は緩やかな回復に向かったが,吸血シーズンの終了に伴い散布前のレベルにまで回復することはなかった.以上の結果から,処理面積を大きくすることで,感染症発生時の緊急的媒介蚊防圧にこの手法は充分に実用的効果があるだろうと結論した.
著者
辻 英明
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.15-17, 2020-03-25 (Released:2021-03-12)
参考文献数
4
被引用文献数
1

現場で粘着捕獲された幼虫など,頭幅測定の手間をかけることは困難で,大型,中型,小型,などの記載ですますケースが多い.なるべく齢期やその範囲を推定したいので,頭幅測定せずに判断することをクロゴキブリで試みた.体色や斑紋のパターンは若齢の判断に特に有効であった.前胸背板の幅は安定しており,不安定な体長による判断の補正に役立った.触角の根元に近い白色あるいは淡色部分の状況や有無の判断も有効であった.
著者
白井 正樹 太田 文彦 菅野 純弥 伊藤 憲彦 中島 慶人 竹内 亨
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.19-23, 2022-03-25 (Released:2023-03-25)
参考文献数
26

太陽光発電所では,カラス属の落石によるものと思われる太陽光パネルの破損が確認されており,パネル破損の発生メカニズムを理解するために,米倉山太陽光発電所(山梨県甲府市)でカラス属の飛来頻度とパネル破損の関係を調査した.ビデオカメラによるカラス属の飛来観測を2つの調査区画(区画A,B)で,2期(第1期:2017年10月24日-2018年1月18日, 第2期:2018年1月19日-3月9日)に亘ってのべ3,792時間行った.調査の結果,飛来頻度が最も多かった第2期・区画B(41個体/時)でのみパネル破損が確認され,パネル破損やパネル上の石の残留の発生確率はカラス属の飛来頻度と正の相関関係が認められた.本研究から,カラス属の飛来頻度が増加すると太陽光パネルの破損するリスクが上昇することが示唆された.
著者
今井 利宏
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.35-38, 2021-03-25 (Released:2022-03-25)
参考文献数
18

培養したカビを用いたオオメヒメマキムシの飼育法を確立した.1.5倍に希釈したオートミール寒天培地(寒天は規定濃度)でPenicillium rubensを培養し,胞子形成後に培地ごと乾燥して飼料とした.ろ紙を張った9 cmシャーレに飼料を置き,羽化1週間から2カ月後までの成虫50〜60個体(雌雄の区別なし)を接種し,1週間後に成虫を除去する.このような方法により,25〜30°Cでは成虫接種から3〜4週間で次世代の成虫が100〜200個体程度得られる.同様の方法で,ムナビロヒメマキムシとユウレイヒメマキムシの飼育が可能である.
著者
角野 智紀 齋藤 はるか 市岡 浩子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.13-15, 2006-06-30 (Released:2019-04-10)
参考文献数
8

愛知県海部郡蟹江町の港湾地帯にある倉庫でトルキスタンゴキブリBlatta lateralisの若虫と成虫が2005年6月から10月にかけて捕獲されたが,これは愛知県では初記録であった.本種の生態と生活史を考え合わせ,当該倉庫内に定着している可能性があると判断した.今後,空調が完備した建築物等での本種の繁殖および害虫化が危惧される.
著者
小泉 智子 矢矧 束穂 長島 孝行
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.1-7, 2009
参考文献数
8

組織学的な手法(ミクロトーム法)を用いて昆虫の組織の切片を作成し,それを観察することによって,死後の時間経過に伴う変化,および様々な条件下での細胞の変化を観察した.その結果,昆虫の筋肉組織は,死亡した時点からかなり短時間で変化が生じることが示された.また,加熱やエタノール浸漬など様々な条件に供試した場合も同様に変化が表れたものの,その変化の仕方には相違が認められた.このことから,昆虫の細胞の変化を観察することによって,製品に混入した時期をより詳細に推定できる可能性が示唆された.
著者
宮ノ下 明大 今村 太郎 古井 聡 西田 典由
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー (ISSN:18803415)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.117-121, 2013

<p>ノシメマダラメイガの1齢幼虫を粒状アーモンドチョコレート製品で飼育した時の発育を28℃,70%RH,16L8Dの条件で調べた.供試したチョコレート製品は,ロースト・ホールアーモンドに3種類の異なるチョコレート(ミルクチョコレート,ホワイトチョコレート,粗く砕いた柿の種入りミルクチョコレート)を掛けて包んだ形状である.各製品での個別飼育の結果,成虫羽化数はミルクチョコレートでは1個体,ホワイトチョコレートでは0個体,柿の種入りチョコレートでは4個体であった.発育日数は,ミルクチョコレートで149日,柿の種入りチョコレートで80,87,91,101日(平均89.7日)であった.集団飼育(<i>n</i>=30)では,ホワイトチョコレートで2個体の成虫羽化がみられた(発育日数は149日と109日).30個体の幼虫が一度に摂食した場合でも,表面のチョコレートを穿孔し内部のロースト・ホールアーモンドを加害することはなかった.</p><p>今回の発育試験の結果から,日本において夏季に本種が粒状アーモンドチョコレート製品に産卵,幼虫侵入が生じた場合,成虫羽化までは80日以上かかると推測された.</p><p>ロースト・ホールアーモンドでの28℃での平均発育日数は,雄では30.2日,雌では32.3日で,成虫羽化率は88.4%(<i>n</i>=26)であった.本種幼虫が何らかの理由で粒状アーモンドチョコレート製品のアーモンドを加害できた場合は,そうでない場合に比べ,著しく発育が短縮(28℃の場合は30日程度)されると考えられた.</p>