著者
楠見 由里子 江守 陽子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.40-47, 2013 (Released:2013-09-18)
参考文献数
22
被引用文献数
2 2

目 的 冷え症における主観的指標として冷え症評価尺F度を,客観的指標としてレーザー組織血流計を用いて測定し,冷え症と周産期アウトカムとの関連について検討した。対象と方法 妊娠末期の妊婦125名(初産婦名76,経産婦49名)を対象に,両手第2指の指尖部における末梢血流量の測定と,4因子8項目からなる冷え症尺度による非妊時の冷え症の自己評価に関するアンケート調査を実施した。さらに,分娩終了後には妊娠分娩経過を診療録より転記した。結 果 妊娠末期の妊婦においては,冷え症評価尺度と末梢血流量の間には関連がなかった(r=-0.036, p=0.687)。冷え症評価尺度の高得点群の初産婦においては,分娩の際の入院時点の子宮口が3cm未満の開大であったものが多かった(p=0.014)。 一方,指先の末梢血流量が少ない群と多い群で分けると,低血流量群では妊娠中の血圧が低く(p=0.047),かつ脈拍数が少なかった(p=0.024)。さらに,低血流量群の初産婦では,分娩第 II 期遷延が多く(p=0.016),ロジスティック回帰分析により交絡因子の影響を排除しても,低血流量と高年齢が分娩第 II 期遷延の要因として示された。結 論 妊娠末期における血行不良は,初産婦における分娩第 II 期遷延の要因となる可能性がある。また,妊娠末期の血流量と非妊時の冷え症の自覚は関連しない。