著者
榊原 充隆
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.67, pp.1-23, 2016-12-20 (Released:2018-02-10)
参考文献数
105

カメムシ亜目は半翅で,口吻をもつことが最大の特徴だが,このほかにも臭くて集合性をもつ等の一般的なイメージがある.害虫管理の面から考察すると,吸収口を持ち,外部消化をおこなう性質は動植物の収量・品質に悪影響をもたらすことを意味する.嗅覚を情報交換や防除手段の基礎とする性質は,そのにおいを嫌うものには不快害虫になり,群れていればさらに嫌われる.そして,カメムシが半翅を持つことはその多様性,すなわちヒトにとっての害虫種群の豊富さ・防除手法の煩雑さにつながる.カメムシ類には同翅亜目同様,音響交信する種が多いことはあまり知られていないカメムシ亜目の特徴だが,音響や視覚,触覚接触といった情報交換が求愛行動に組み込まれているカメムシの性質は,フェロモン利用によるカメムシ類防除を困難にしている一因と思われる.
著者
櫻井 民人 榊原 充隆
出版者
北日本病害虫研究会
雑誌
北日本病害虫研究会報 (ISSN:0368623X)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.59, pp.126-128, 2008

アカスジカスミカメ (以下アカスジ)の玄米吸汁による斑点米被害がここ数年増加していることから、その生物学的特性を解明することが緊急に求められている。本種の飼育方法としては、出穂したコムギを用いる方法、アワ幼苗を用いる方法、イネ科雑草の穂とコムギ幼苗を用いる方法がこれまでに提案されている。しかしながら、穂を用いる場合には長期栽培を要することや野外虫混入の危険性があること、アワ幼苗のみの飼育では得られる孵化幼虫数が少ないことなどの問題点がある。一方、アカヒゲホソミドリカスミカメ (以下アカヒゲ)では、コムギ幼苗のみで簡易に飼育が可能であること、幼苗に産み付けられた卵をまとめて低温保存することによって、その後の発育に大きな悪影響を及ぼすことなく、孵化日や羽化日を斉一化し、同日齢の成幼虫を同時に多数得られることが報告されている。アカスジでもコムギ幼苗のみで飼育可能であることが示唆されているものの、効率的に飼育するための詳細な条件については報告されていない。そこで、本研究では、アカスジ飼育法開発の一環として、孵化幼虫を同時に多数得るためにコムギ幼苗に産み付けられた卵を低温保存することが、その後の幼虫孵化に与える影響を調査した。