著者
平原 典幸 西 健 仁尾 義則 樋上 哲哉
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.64, no.12, pp.2980-2984, 2003
被引用文献数
1

症例は79歳,男性.主訴は発声困難,呼吸困難. 14時頃バイクの運転中転倒し, 16時より嗄声が出現. 18時発声障害が出現し, 20時頸部腫脹,呼吸困難および発声困難な状態を発見され救急搬送される.来院時,努力様の浅呼吸であり発声障害を認めた.軽度貧血と炎症反応の上昇を認め,動脈血ガス分析はPaO<sub>2</sub> 79.6mmHg, PaCO<sub>2</sub> 36.2mmHgと低酸素状態であった.頸部側面X線にて喉頭,気管は前方に圧排され気道の狭窄を認め咽後間隙は開大していた.頸部CTにて下咽頭から食道の背部の咽後間隙に縦隔まで達する巨大血腫を認め,食道,気管は圧排されていた.来院後,気管挿管し気道を確保. 7病日のCTにて血腫の大きさに著変がないため気管切開施行. 18病日,気管チューブを交換した際,呼吸困難を認めず, 26病日気管チューブを抜去し退院となった.頭頸部外傷患者の診療にあたっては些細な機転でも本症を念頭においた診察が必要である.
著者
柳清 洋佑 小柳 哲也 伊藤 寿朗 栗本 義彦 川原田 修義 樋上 哲哉
出版者
特定非営利活動法人 日本血管外科学会
雑誌
日本血管外科学会雑誌 (ISSN:09186778)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.745-748, 2012

要 旨:症例は63歳女性.突然の吐血にて近医へ搬送され内視鏡検査を施行された.胸部中部食道に粘膜剥離所見と狭窄を認めるのみであり,狭窄部は通過できなかったため精査目的に入院した.翌日CT撮影を行ったところ最大径40 mmの胸部下行大動脈瘤および瘤の食道穿破を認めた.胸部中部食道は上行大動脈と下行大動脈に挟まれ圧迫されている所見であった.前医出発直前に大量吐血し,挿管管理,大量輸血された状態で到着した.緊急でステントグラフト内挿術を施行し出血をコントロールした.穿破した食道は感染源となるため,後日胸部食道亜全摘および大網充填術を行った.全身状態が改善した後に大腸を用いて食道再建術を行った.胸部大動脈瘤の食道穿破は死亡率が極めて高く治療法が確立されていないのが現状である.今回ステントグラフト内挿術による出血のコントロールを行い,食道切除術による病巣切除を併せて行うことで救命し得た1症例を経験したため報告する.