著者
大谷 敏嘉 八尾 建史 佐藤 麻子 岩崎 直子 樋上 裕子 笠原 督 平田 幸正
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.8, pp.739-746, 1987
被引用文献数
1

1980~1984年に東京女子医科大学糖尿病センター通院中の25歳未満発見NIDDM 97名 (男51名, 女46名, 発見年齢18.4+4.2歳 [mean±SD], 罹病期間7.1±6.4年) について, 糖尿病の遺伝歴と肥満および細小血管症との関係を検討した. 同期通院中の25歳未満発症IDDM 127名 (男60名, 女67名, 発症年齢11.8±5.9歳, 罹病期間10.5±7.2年) を対照とした.<BR>第一度近親に糖尿病を認める発端者は, NIDDM 49.0%, IDDM 11.9%であった (p<0.005). NIDDMで, 三世代にわたってNIDDMの遺伝を有し, 同胞のうち半数以上にNIDDMを認める発端者をMODY, MODY以外のNIDDMをNIDDYと規定したところ, 11.5%にMODYがみられ, 20歳未満発見発端者では19.2%, 20歳以上25歳未満発見発端者では2.3%にMODYを認めた (p<0.025).<BR>過去に肥満を認めたものは, NIDDM 30.9%, IDDM 3.9%であった (p<0.005). 肥満はMODYでは1人もなく, NIDDYでは34.9%にみられた.<BR>網膜症は, NIDDM 36.8%(単純22.1%, 増殖14.7%), IDDM 53.2%(単純43.7%, 増殖 9.5%) にみられた。MODYは41.7%(単純25.0%, 増殖16.7%), NIDDYは36.1%(単純21.7%, 増殖14.5%) に網膜症を認めた. 腎症は, NIDDM 14.7%, IDDM 10.3%にみられた. MODYは16.7%, NIDDYは14.5%に腎症を認めた. 若年発症NIDDMであってもIDDMと同様に重症細小血管症がみられ, また, MODYもNIDDYも細小血管症をおこしやすいものから, おこしにくいものまで幅広いheterogencityを有するものと推論した.