著者
後藤 忠男 衣浦 晴生 長岐 昭彦 樋口 俊男
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.23-28, 2006

昆虫病原性糸状菌<i>Beauveria bassiana</i>を培養したシート型不織布製剤によるマツノマダラカミキリの防除効果を明らかにするため,野外試験を行った。成虫羽化脱出前年の10月末に被害材に製剤を施用した結果,幼虫の材入孔数に対する成虫脱出孔数の比率は2施用区において0.28, 0.33となり,対照区の0.54に比べ有意に低く,それぞれ期待羽化数の38.9%, 47.7%のマツノマダラカミキリが減少したと推定された。羽化脱出成虫を防除対象として,脱出開始2週間前に被害材に製剤を施用し,成虫脱出用の開口部を残してポリエチレンシートで被害材を覆った結果,捕獲後2週間以内に95%以上の個体が感染死亡し,成虫に対し防除効果が極めて高いことが示された。また,感染成虫の後食量は健全虫に比べ約40%にまで有意に減少した。本シート型不織布製剤では成虫を即効的に死亡させられなかったものの,マツノザイセンチュウの大量離脱や雌成虫の産卵開始までにはほとんどの個体が感染死したことから,昆虫病原性糸状菌による成虫防除はマツ材線虫病の拡大防止の手段として利用できると考えられた。