著者
八木橋 勉 齋藤 智之 前原 紀敏 野口 麻穂子
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.63-65, 2014-10-31 (Released:2017-07-26)

従来,カブトムシ(Trypoxylus dichotomus septentrionalis)が自ら樹皮を傷つけて樹液を得るという報告はなかったが,近年シマトネリコ(Fraxinus griffithii)の樹皮を傷つけて樹液をなめる例が報告された。しかし,シマトネリコは庭木や公園樹として導入された樹木で,本来の分布域は亜熱帯から熱帯であり,カブトムシの分布域とは重なっていない。そのため,この行動がカブトムシ本来のものであるのか不確実であった。本研究では,岩手県滝沢市において,在来種であるトネリコ(Fraxinus japonica)に,野生のカブトムシが傷をつけて樹液をなめる行動を観察した。これにより,この行動がカブトムシの分布域に存在する在来の樹種に対しても行われる,カブトムシ本来の行動であることが明らかになった。
著者
八木橋 勉 齋藤 智之 前原 紀敏 野口 麻穂子
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.63-65, 2014

従来,カブトムシ(<i>Trypoxylus dichotomus septentrionalis</i>)が自ら樹皮を傷つけて樹液を得るという報告はなかったが,近年シマトネリコ(<i>Fraxinus griffithii</i>)の樹皮を傷つけて樹液をなめる例が報告された。しかし,シマトネリコは庭木や公園樹として導入された樹木で,本来の分布域は亜熱帯から熱帯であり,カブトムシの分布域とは重なっていない。そのため,この行動がカブトムシ本来のものであるのか不確実であった。本研究では,岩手県滝沢市において,在来種であるトネリコ(<i>Fraxinus japonica</i>)に,野生のカブトムシが傷をつけて樹液をなめる行動を観察した。これにより,この行動がカブトムシの分布域に存在する在来の樹種に対しても行われる,カブトムシ本来の行動であることが明らかになった。
著者
古澤 優佳 斉藤 正一 千葉 翔 高橋 文
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.66-70, 2016 (Released:2017-12-01)
参考文献数
22
被引用文献数
2

全国的に個体数が増加傾向にあるニホンジカは,多雪地帯のため冬季の生存が困難とされてきた東北地方の日本海側でも急速に分布を拡大しており,山形県でも目撃され始めた。このため,初期動態の把握を目的に,寄せられた目撃情報の内容や目撃地の立地環境を分析した。その結果,シカは全県に生息している可能性が高く,近年は庄内地方南部と西置賜地方で目撃が多い傾向が見られた。また,目撃地は,周囲が森林で近くに道路や河川がある平坦な耕地で,特に,開けていて見通しが良く人的利用が多い場所の傾向が高く,日中に森林から一時的に出てきた際に目撃されている可能性が高かった。
著者
斉藤 正一 岡 輝樹
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.94-98, 2003
被引用文献数
2

山形県におけるクマ有害駆除数に関連する要因について解析し,駆除数予測の可能性を検討した。春季有害駆除数は消雪日から回帰することができたが,夏秋季有害駆除数を予測するための因子は検出できなかった。しかしながら各年の有害駆除数の増減は堅果類の凶作指数の増減に応答する傾向があり,堅果類の豊凶を予測するシステムの充実が適正な被害防除法の確立に寄与するであろうと考えられた。
著者
後藤 忠男 衣浦 晴生 長岐 昭彦 樋口 俊男
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.23-28, 2006

昆虫病原性糸状菌<i>Beauveria bassiana</i>を培養したシート型不織布製剤によるマツノマダラカミキリの防除効果を明らかにするため,野外試験を行った。成虫羽化脱出前年の10月末に被害材に製剤を施用した結果,幼虫の材入孔数に対する成虫脱出孔数の比率は2施用区において0.28, 0.33となり,対照区の0.54に比べ有意に低く,それぞれ期待羽化数の38.9%, 47.7%のマツノマダラカミキリが減少したと推定された。羽化脱出成虫を防除対象として,脱出開始2週間前に被害材に製剤を施用し,成虫脱出用の開口部を残してポリエチレンシートで被害材を覆った結果,捕獲後2週間以内に95%以上の個体が感染死亡し,成虫に対し防除効果が極めて高いことが示された。また,感染成虫の後食量は健全虫に比べ約40%にまで有意に減少した。本シート型不織布製剤では成虫を即効的に死亡させられなかったものの,マツノザイセンチュウの大量離脱や雌成虫の産卵開始までにはほとんどの個体が感染死したことから,昆虫病原性糸状菌による成虫防除はマツ材線虫病の拡大防止の手段として利用できると考えられた。
著者
杉田 久志 金子 岳夫
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.38-41, 2004

岩手県浄法寺町の稲庭岳の山頂付近にはオオシラビソが分布している。その分布状況について調査した結果,樹高2.5m,胸高直径5.2cmのものが1個体確認されたのみであった。このオオシラビソは最も近い他の山の分布域(八幡平)から22km離れており,他の集団から隔絶された微小集団の分布事例であるとみなされる。
著者
杉田 久志 金子 岳夫
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.38-41, 2004-03-31 (Released:2018-03-19)

岩手県浄法寺町の稲庭岳の山頂付近にはオオシラビソが分布している。その分布状況について調査した結果,樹高2.5m,胸高直径5.2cmのものが1個体確認されたのみであった。このオオシラビソは最も近い他の山の分布域(八幡平)から22km離れており,他の集団から隔絶された微小集団の分布事例であるとみなされる。
著者
山本 信次 石場 圭太 土屋 俊幸
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.50-54, 2009-11-30 (Released:2017-07-27)

アクティブレンジャー(以下ARとする)は,行政側の国立公園における現場での人手不足の解消と,国立公園に関わっている多様な主体のコーディネーター役を目的として,2005年の6月に導入された制度である。2006年の段階で,ARは国立公園・野生鳥獣保護区など計52地区に,65名配属されている。国立公園には,全28国立公園中25国立公園にARが配属されており,現場での管理業務に従事している。本研究では,十和田八幡平国立公園十和田八甲田地区において,ARが実際どのような業務を行い,それらの業務が公園管理においてどのような位置づけにあるのかを調査した。その調査の結果,ARの業務が現場業務に大きく貢献している一方で,導入目的の1つであるコーディネーターとしての機能は果たせていないことが明らかになった。
著者
久保田 多余子
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.9-14, 2017 (Released:2018-04-05)
参考文献数
14
被引用文献数
1

青森県太平洋沿岸の海岸林では,東北地方太平洋沖地震の津波を受けて,凹地にあるクロマツが塩害により枯死し,凸地にあるクロマツが生存した。これは,津波によって海岸林内に侵入した海水の排水が凹地で悪く凸地で良いためと推測されるが,海岸林内の微地形の違いにより排水状態がどのように異なるのかを実測した事例はほとんどない。そこで,林内に起伏がある青森県三沢市淋代の海岸林内において,凹地と凸地で地下水位と土壌水分量(深度-1.0 mまで)を測定した。この結果,地下水位の約0.6 m上方の土層までは土壌水分量が高くなり排水が悪くなることが確認された。このため,凹地では地下水位が相対的に高い(地表から近い)ために湿潤になりやすいと考えられた。しかしながら,凹地で塩害被害が大きかったのは,クロマツの根が凸地よりも長時間海水に浸水したためというよりは,地下水位が高いことに起因した間接的な原因によると考えられた。
著者
立川 史郎
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.17-19, 1999-03-25

東北地方においても数少なくなってきた馬搬作業について,1998年7月に盛岡市近郊での現地調査を行なった。人力木寄せを含む積込み時間の割合が大きく決して楽な作業ではないが,作業従事者の仕事と馬に対する強い愛着心に支えられて今日まで続けられている。長年行なわれてきたこのような伝統的な作業技術を新たな観点から見直していくことも,今後の作業システムのあり方を考える上で重要なものと示唆された。
著者
立川 史郎 瓜田 元美 渡邊 篤 澤口 勇雄
出版者
東北森林科学会
雑誌
東北森林科学会誌 (ISSN:13421336)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-6, 2011-05-31

今日わが国では非常に数少なくなった馬搬作業について,2009年1月および2009年11月に宮城県内で調査し,今後における馬搬作業存続の可能性について検討した。木寄せ・積込み作業と荷降ろし作業は全体の作業時間の44〜69%を占め,労働負担の高い作業であった。馬搬作業の搬出功程は搬出距離50〜500mで2.5〜12.0m^3/日であり,小型運材車による搬出功程に匹敵した。搬出路のコーン指数の増加率は深さ20cmまでで14〜34%であったが,同一深さでクローラ式車両は72〜154%,ホイール式車両は48〜74%であり,土壌の締め固めは集材用車両と比較してかなり小さかった。馬搬作業は今後,木寄せ・積込み作業や荷降ろし作業の改善などの技術的課題や後継者問題などの社会的課題が克服されれば,わが国の小規模な搬出現場に適合した環境負荷の少ない搬出方法として,今後も存続の可能性があると結論された。