著者
樋口 博美
出版者
専修大学人間科学学会
雑誌
専修人間科学論集. 社会学篇 (ISSN:21863156)
巻号頁・発行日
no.2, pp.113-125, 2012-03

本稿は、祇園祭山鉾巡行の実現と維持にかかわる人々に焦点を当て、そこで取り結ばれる関係を「祭縁」として考察し、その全体の概要を捉える図式の提示を試みたものである。山鉾を「建てて、動かす」ことをめぐり、どのような人々がどのように関係するのかという関心から、祭礼にかかわる人々と諸集団を①祭へのかかわり方、②空間、③時間、④伝統の視点から記述・考察している。①祭へのかかわり方を、祭礼の実現・維持に向けた機能の観点から、企画とその運営の役割を担うもの(山鉾保存会、町内在企業、通い町衆、山鉾連合会)と、技能によって実動する役割を担うもの(手伝い方、大工方、車方の作事三方)に分類した。それぞれを②空間、③時間、④伝統の視点でみると、前者は、その集団構成を変えつつも祭礼の基点となる町会所周辺に生活基盤をもち、祭礼にかける時間も多いという特徴で括られる。これを「企画・運営をめぐる祭縁」とした。後者は、やはりその集団構成を変えつつあるが、町会所から離れたところに生活基盤のある祭礼時期に限定的な関係であり、祭礼にかける時間も少ないという特徴で括られる。これを「技能・実動をめぐる祭縁」とした。異なる役割と社会関係をもつ二つの祭縁は、山鉾巡行という至上命題を実現するにあたり、互いに必要不可欠な関係として結ばれる。これを都市的祭縁として明らかにした。