著者
樋口 友里
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.8, pp.795, 2019 (Released:2019-08-01)
参考文献数
4

近年,メタボリックシンドロームの増加に伴って,非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver desease: NAFLD)患者数が増加している.NAFLDは非アルコール性脂肪肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)を経て肝硬変・肝がんへと進展していくことから,その予防・治療は重要な課題である.AMP活性化プロテインキナーゼ(AMP-activated protein kinase: AMPK)は,複数の代謝経路を調節する因子として知られている.これまでに,経口糖尿病薬であるメトホルミンは肝臓でAMPKを活性化し,糖新生をはじめ様々な代謝異常を改善することはよく知られていた.しかし,全身で恒常的にAMPKを活性化させた遺伝子操作マウスでは肥満形質が発現することも指摘されており,AMPK活性化とNAFLDおよび肥満との関わりが明確となっていなかった.本稿では,ドキシサイクリン(Doxycycline: Dox)の投与により肝臓で活性型AMPKの発現を誘導できるマウスモデルを用いて,肝臓特異的なAMPK活性化がNAFLDの予防・治療標的となり得るかを検討したGraciaらの論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Day E. A. et al., Trends Endocrinol. Metab., 28, 545-1560(2017).2) Yavari A. et al., Cell Metab., 23, 821-836(2016).3) Garcia D. et al., Cell Rep., 26, 192-208(2019).4) Xu G. et al., Curr Med. Chem., 25, 889-907(2018).