著者
加藤 充子 東 英一 井戸 正流 伊藤 正寛 二井 立恵 樋口 和郎 庵原 俊昭 神谷 斉 桜井 実
出版者
特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.61-65, 1991-03-31 (Released:2011-03-09)
参考文献数
15

免疫化学療法および中枢神経系に対する再発予防治療 (4例を除き24Gy頭蓋照射を含む) を受け, 完全寛解が5年以上持続している小児急性リンパ性白血病 (ALL) 患児56例について, 発症後の知能指数 (IQ) の経時的変化を検討した.対象症例の経過観察期間は発症後5.1~15.5年, 平均10.1年で, この間に一人当り1~4回, 計121回の知能検査を実施した.42例については, 1.4~10.0年, 平均4.5年の間隔で2回以上の検査が行われた.この結果, 1) IQは発症後1~3年以降, 時間の経過とともに低下する.2) IQの低下は発症時年齢と関係があり, 5歳未満発症児で有意の低下が認められる.3) IQの低下は性別と関係し, 女児において有意の低下が認められることがわかった.また, 発症後10年以上経過してもなおIQは低下し続ける傾向にあり, 長期間にわたる経過観察が必要であると思われた.
著者
大平 昌美 岩本 彰太郎 山川 紀子 樋口 和郎 岡村 聡 辻岡 朋大 綿谷 るみ 村山 萌 高橋 悠也 東久保 和希 福喜多 晃平 牧 兼正
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, 2017

はじめに タナトフォリック骨異形成症(TD)罹患児では人工呼吸管理が必須であるため早期に気管切開が行われ、その後に経口摂取可能となる例も少なくない。しかし、生後から長期間の経口気管挿管を経たのちに摂食可能となった症例の報告はなく、特に喉頭蓋欠損を合併した症例に対する摂食嚥下訓練方法は確立されていない。今回、生後から長期間の経口気管挿管を経た無喉頭蓋合併TD罹患児に対して実施した摂食嚥下訓練の取り組みについて報告する。 症例 出生前にTDと診断された9歳女児。出生直後より呼吸障害のため人工呼吸管理されていた。諸事情から経口気管挿管管理が8年5カ月間続いた。その間、経鼻経管で栄養管理され、経口摂取は行われなかった。気管切開施行後、唾液の嚥下を認めたことから摂食嚥下訓練の適応があると判断した。訓練開始にあたり、喉頭内視鏡検査では喉頭蓋欠損を認めたものの声門閉鎖可能であった。嚥下造影検査(VF)では、水分およびミキサー食・まとまり食・ゼリーの形態を10°〜30°のギャッジアップの姿勢で試みたが、誤嚥および喉頭侵入は認めなかった。同結果を受け、週5回、1日1回の頻度でPTによる呼吸リハビリ後、STによる口腔内マッサージおよび経口摂取訓練を実施したところ、約1カ月にはヨーグルト10cc程度の経口摂取が可能となった。 考察 経口摂取開始にあたり、長期間の経口気管挿管に起因する声門閉鎖不全が懸念された。そのためVF前に喉頭内視鏡検査を実施したことで、喉頭蓋欠損を同定することができた。その後のVFでは、喉頭蓋欠損による誤嚥に留意したが問題なく嚥下できていることが確認できた。また、本症例は嚥下機能が比較的保たれており、感覚過敏等による摂食拒否がなかったことがスムーズな経口訓練につながったと考える。今後、経口摂取機能のさらなる 発達を促すにあたり、無喉頭蓋の嚥下機能への影響に関して精査・検討する必要がある。