著者
竹内 雄毅 樋口 恒司 坂井 宏平 文野 誠久 青井 重善 古川 泰三 木村 修 田尻 達郎
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.76-80, 2014-02-20 (Released:2014-02-20)
参考文献数
16

11 歳女児.初潮以降3 回の月経周期に伴う右下腹部痛,腹部腫瘤および同部位圧痛を主訴に近医を受診したところ,腹部超音波にて骨盤内腫瘤を認め,精査目的に紹介となった.腹部CT にて重複子宮・膣と右膣閉鎖による右子宮膣留血腫を認めた.また右腎は無形成であった.Herlyn-Werner-Wunderlich 症候群(HWWS)と術前診断し,待機的手術を施行した.右膣閉鎖と膣壁膨隆を認め,膣中隔切開・内容液ドレナージ後,膣壁形成を施行した.以降,下腹部痛と腹部腫瘤は消失し,術後経過,月経発来も順調である.HWWS は,見かけ上,月経が正常に起こるため他の女性性器奇形(処女膜閉鎖,膣閉鎖)よりも診断が遅れることがある.治療は膣中隔切除と留血腫ドレナージで良好な成績を得られる.下腹部腫瘤と片側腎無形成を伴う二次性徴期女性の急性腹症に対しては,HWWS を考慮に入れて診断と治療を行うべきである.
著者
樋口 恒司 今津 正史 下竹 孝志 常盤 和明 岩井 直躬
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.7, pp.998-1002, 1999-12-20 (Released:2017-01-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

症例は4歳男児.1歳半頃, 排便時に肛門より球状のウズラ卵大腫瘤の脱出を認めた.3歳頃からは排便ごとに脱出を認めるようになったため, 近医受診後直腸脱を疑われ当科紹介となった.直腸指診上, 直腸後壁に弾性軟のウズラ卵大の腫瘤を触れ, 超音波検査にて直腸後壁に嚢胞性病変を認めた.注腸造影, CT, MRIにて直腸重複症と診断し, 経肛門的腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は径3 cm, 直腸の後壁内に存在し, 嚢胞状で内容は褐色粘液であった.組織学的には, 嚢胞は円柱上皮に覆われ, 杯細胞の散在を認めた.また, 直腸とは独立した粘膜固有層, 平滑筋層を認めた.直腸重複症は本邦では11例の文献報告を見るのみであり, 比較的まれな疾患である.本症例は経肛門的に直腸後壁粘膜を切開し, 腫瘤を摘出し得た.球状腫瘤の肛門外脱出を認める場合, 直腸重複症を鑑別診断の一つとして考慮すべきで, 鑑別診断にはCT及びMRIが有用である.