著者
樋口 由美子 森嶋 隆文
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.98, no.7, pp.721, 1988 (Released:2014-08-08)

帯状疱疹患者61例に髄液検査を行ない,髄膜炎現象とその臨床症状との相関や髄液所見の特徴,殊に,髄液細胞数や髄液中varicella zoster virus(VZV)CF抗体価の経時的変動について検索し,次の興味ある知見を得た.1)帯状疱疹患者の66%に髄膜炎現象がみられ,このうち,髄膜刺激症状を呈したのは30%にすぎなかった.2)髄膜炎現象を伴う症例の罹患部位は脳神経領域に限らず,約半数か脊髄神経領域であった.3)髄膜炎現象は汎発疹の有無や基礎疾患の合併とは相関しなかった.4)髄膜炎現象をみる症例の髄液所見に関し,髄液細胞増多は軽度~中等度であり,外観は水様透明,総蛋白は正常~上昇,Clや糖はほぼ正常で,ウイルス性髄膜炎の所見に一致していた.トリプトファン反応がしばしば陽性を示した.5)髄液細胞増多の程度と汎発疹や髄膜刺激症状の出現頻度とは必ずしも相関しなかった.6)症例の38%が急性8期に髄液細胞増多を示した.中等度以上の細胞増多群における髄液細胞数の経時的変動に関し,症例の80%で,髄液細胞数が1~2病週に最高値を示し,その1週後に急激に数を減じるが,その後の減少度は緩徐である.7)髄液中VZV CF抗体は急性期には出現せず,回復期には細胞増多群の63%が有意の上昇を示した.中等度以上の細胞増多群では,その出現頻度は88%と高率であった.髄液中VZVCF抗体価の経時的変動に関し,症例の70%が髄液細胞数の変動とほぼ同様のパターンを示し,第1~2病週に最高値を示し,第4病週には1倍未満となった.8)初回検査時の髄液細胞数は抗ヘルペスウイルス剤投与群では非投与群に比して有意の低値を示していた.
著者
樋口 由美子
出版者
信州大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

[目的]樹状細胞療法をうける患者にG-CSFを投与することにより、樹状細胞ワクチンの作製量を増やすことができるかということを、単球表面の接着分子及び細胞外マトリックスの発現に着目し解明する。[方法]1.対象樹状細胞療法を行う患者7名を対象とし、G-CSF投与前と投与24時間経過した後の末梢血を用いた。2.末梢血からの単球分離末梢血より比重遠心分離法を用いて単核球を分離した後、CD14Micro Bead (Miltenyi Biotec)と反応させ、磁気分離装置(Auto MACS)を用いてCD14陽性細胞を分離した。3.PCRアレイ分離したCD14陽性細胞よりtotal RNAを抽出し、RT反応によりcDNAを作製した後、RT^2 SYBER Green/Rox qPCR Master Mix (Quiagen)を用いてPCR反応液を作製し、RT^2 Progiler PCR Array (Quiagen)を用いて定量PCRを行った。装置はABI7900 (Applied Biosystems)を使用した。[結果]末梢血より分離したCD14陽性細胞のうち、単球は97.86±2.62%であった。PCRアレイを用いて84種類の接着分子及び細胞外マトリクスの発現解析をした結果、G-CSF投与前に比較して投与後ではMMP9のmRNA発現量が7.62倍に増加していた(最大値29.61倍・最小値1.91倍)。MMP9はヒト末梢血単球においても少量分泌されており、in vitroの実験においては単球を培養する際にPMAまたはM-CSFを添加することによりMMP9の分泌量が増加し、単球の接着性、伸展性が促進されることが報告されている(mRNA量はそれぞれ7倍、5倍)。今回の結果は、その報告を強く支持するものであり、G-CSF投与により単球のシャーレへの接着が増強され、結果的に樹状細胞ワクチンの作製量が増加すると考えられた。