著者
樋室 伸顕
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1095-1102, 2017-12-15

はじめに 学生時代,小児施設での臨床実習が決まったとき,親とどのように接したらよいか不安に思った経験はないだろうか.一方,小児施設で臨床をしている理学療法士は,親とのかかわり方をどのように身につけているのだろうか.卒前卒後を通して,理学療法教育として家族とのかかわりを学ぶ機会は限られている.先輩からの助言や個人の学習努力,または積み重ねた経験に基づいて臨床実践されているのが現状である. 家族が子供の発達に大きな影響を与えることは疑いの余地がない.したがって子供の発達を支える小児理学療法では,根拠を持って家族とかかわる必要がある.そこで本稿では,Family-Centered Servicesの言葉の意味や概念,定義,効果をレビューする.そして家族を中心として理学療法を実践するうえで特に重要な情報提供のありかたを,私見を交えて述べる.小児理学療法の臨床・教育において,科学的根拠を持って家族とかかわるきっかけになることが本稿の目的である.
著者
楠本 泰士 樋室 伸顕 西部 寿人 木元 稔 宮本 清隆 高木 健志 髙橋 恵里 阿部 広和
出版者
一般社団法人 日本小児理学療法学会
雑誌
小児理学療法学 (ISSN:27586456)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.7-17, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
27

【目的】共同意思決定(Shared decision making;SDM)の知識と実践状況の乖離,患者の年齢帯や療法士の経験年数による目標設定の違いを明らかにすることを目的とした。【方法】小児疾患に関わる療法士115名を対象とし,ウェブアンケートにて目標設定の負担や実践の程度,目標設定に関するSDMの実践状況や内容を調査した。経験年数による2群で比較し,自由記述の内容は質的記述的分析を行った。【結果】目標設定に負担を感じている対象者が全体の2/3以上いた。2群間でSDMの実践状況に差はなく,対象児の年齢に応じて目標設定内容に違いがあった。SDMの実践状況と質的記述的分析の抽出内容に乖離があった。【結論】小児分野の療法士は,SDMの知識とSDMの実践状況に乖離があり,経験年数の違いにより目標設定内容に違いがあることが示唆された。SDMの正しい理解や経験年数,目標設定の思考過程を参照して,卒前卒後教育に活かしていく必要がある。