著者
二通 諭
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.40, no.10, pp.1365, 2012-10-10

「あなたはADHD系」,「彼はアスペ系」といったように,友人同士の他愛もない性質分類にも発達障害カテゴリーが用いられるようになってきた.そのような視座から,往年の映画の登場人物をみるならどのような解釈が成り立つだろうか.発達障害を有する人物は,映画の主人公になりやすい特異なキャラクターを有しているが,その頂点に立つ人物といえば,やはり「男はつらいよ」シリーズの寅さんこと車寅次郎(渥美清)である. 本人が語る自己像も「生まれついてのバカ」なら,おいちゃんの寅さん像も「生まれつきのバカ」であり,幼少期から発達や行動上の問題を有していたものと思われる.
著者
田内 悠太 荻野 智之 森沢 知之 大松 重宏 坂本 利恵 和田 陽介 道免 和久
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.46, no.11, pp.1099-1105, 2018-11-10

要旨 【目的】介護支援専門員(ケアマネジャー,care manager;CM)を対象に,心不全疾患理解度とケアプラン状況を把握することを目的とした.【対象・方法】2016年9月時点での兵庫県丹波医療圏域内に登録してある60か所の事業所に在籍しているCM 152名に対し,郵送法にてアンケート調査を実施した.【結果】回収率は71.7%.CMの心不全の疾患理解度は高かった(72.0%)が,ケアプラン作成においては「運動・活動量」の症状を反映しておらず,心不全モデルケースに対して身体活動量を維持・向上させるための運動支援系サービスの選択は少なかった.医療情報の収集では医師からは直接的に得ていたが,コメディカルからは書面上で間接的に得ており,情報提供書の有効性が高かった.【結語】CMの心不全疾患理解度に比して運動支援系サービスの選択が少ない原因として,身体活動量を含めた運動療法の重要性の認識が低く,在宅心臓リハビリテーションを推進するうえでの課題になっていると考えられた.
著者
半沢 直美
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテ-ション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.419-423, 1999-05
被引用文献数
1
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.1398, 1997-12-10

障害の受容を妨げる要因の一つに,障害者自身や家族の偏見という問題力がある.障害に対する誤解や偏見に満ちた社会のなかで暮らしている本人や家族は,しばしば,自らも障害に対する誤解や偏見を共有しているため,いざ自分が当事者になった時の混乱や絶望が大きいのである.しかし,1950年に発表されたパール・バックの『母よ嘆くなかれ』(伊藤隆二訳,法政大学出版局)には,当事者がそうした先入観を乗り越えて,自らの運命を受け入れていく過程が描かれている. 米国の宣教師の家に生まれたパール・バックは,元々「愚かなことや,のろまなことを黙って見ていられない性質」だった.しかし,精神遅滞の娘を養育する過程で,パール・バックは「娘の魂もまた,その魂として最大限に成長する権利をもって」おり,「人間の精神はすべて尊敬に値すること」を知る.彼女は,「人はすべて人間として平等であること,また人はみな人間として同じ権利をもっていることをはっきり教えてくれたのは,他ならぬわたしの娘でした.(中略)もしわたしがこのことを学ぶ機会を得られなかったならば,わたしはきっと自分より能力の低い人に我慢できない,あの傲慢な態度をもちつづけていたにちがいありません」と語るのである.
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.1164, 2015-12-10

イタリア・ルネサンス期の詩人ルドヴィコ・アリオスト(1474-1533)が1532年に完成版を発表した『狂えるオルランド』(脇功訳,名古屋大学出版会)は,中世騎士物語を代表する叙事詩とされているが,物語の後半第24歌から39歌には,東国の姫アンジェリカに失恋した後に勇者オルランドが発狂する様子が描かれている. たとえば,第29歌には,オルランドについて,「裸の姿になるまでに物狂いした」,「想いに囚われ,放心していた」,「いずこにか知らねど,思慮を失くして来た」,「方々さまよい歩いた」などの記述があるほか,次のような狂気を思わせる表現もみられる.「眼はほとんど額の中に落ち窪み,顔は干からび,髑髏さながら.その蓬髪はすさまじく,また惨めたらしく,髪茫々で,恐ろしく,また汚らし」,「食い物が欲しいときには,村々,家々荒らしてまわり,果物や,肉やら,パンを奪い取り,腹に詰め込み,人々に暴力振るい,殺めたり,怪我をさせたり,一つ所にじっとせず,絶えず前へと進みつづける」.
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.82, 2009-01-10

紀元前423年に上演されたアリストパネスの喜劇『雲』(田中美知太郎訳,筑摩書房)はソクラテスを批判した作品として有名であるが,そこに登場するソクラテスは精神障害に関わりの深い人物として描かれている. 『雲』は,ある年老いた父親が息子をソクラテスに弟子入れさせようとする話である.しかし,ソクラテスへの弟子入りをめぐる父親とのやり取りのなかで息子は,ソクラテスのことを「悪いダイモンに憑かれている」とか「蒼白い顔をして,履物もはかないでいる連中」と,明らかに病的な人物として蔑視している.実際,その直後に登場するソクラテスは,一人釣りかごのなかで天空のことを思案しているという奇人なのだが,ソクラテスの感化を受けた父親は,息子から次のような批判をされる状態に陥っている.「お父さん,いったいどうしたんです,こりゃ正気の沙汰じゃありませんよ」,「あんな,いかれた連中の言うことを真にうけるなんて,気違い沙汰もひどすぎますよ」,「親父は気が違っている.裁判所へ訴え出て,精神異常の確認をしてもらおうか,それとも棺桶屋に親父の気が変になっていることを話しておく方が,いいか知らん」.
著者
川越 雅弘
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.305-311, 2019-04-10

はじめに 団塊の世代が90歳台に入る2040年にかけて,85歳以上高齢者(以下,超高齢者)が急増する.超高齢者は,他の年齢層に比べ,医療や介護,生活支援に対するニーズが高い.また,入院や死亡に対するリスクも高い.さまざまな環境の変化の影響も受けやすく,状態変化も来しやすい.生活上の課題も多領域にわたるため,単一職種だけでは課題が解決できないことも多い.これら特性,特徴を有する超高齢者が,住み慣れた地域で,安全かつ安心な生活を送るためには,医療・介護・生活支援サービスの包括的提供体制の構築と多職種間の連携強化が必要となる.こうした背景のもと,厚生労働省は,さまざまな多職種連携策を推進しているが,これら施策の意図や内容を理解するためには,まずその背景を理解しておく必要がある. そこで,多職種連携が求められる背景について,人口構造の変化,高齢者の医療・介護ニーズの視点から整理を行う.次に,多職種連携の機能強化に関する制度改正/報酬改定のなかから,リハビリテーションに関する3つのテーマ(① 入退院・退所時の連携強化,② 入院中〜退院後の一貫したリハビリテーション提供の促進(同一職種間の縦の連携強化),③ 自立支援・重度化防止の推進)に焦点を当て,リハビリテーションの視点からみた制度改正/報酬改定のポイントとリハビリテーション職に期待される役割について解説する.最後に,同一職種および他の職種間との連携強化策について私見を述べる.
著者
谷川 広樹 大塚 圭 才藤 栄一 伊藤 慎英 山田 純也 村岡 慶裕 冨田 昌夫 橋本 修二
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.38, no.12, pp.1175-1181, 2010-12-10

要旨:〔目的〕視診による異常歩行重症度スコアリングの評価者間信頼性を検討した.〔方法〕臨床経験6年以上の理学療法士10名を評価者とし,片麻痺患者13名のトレッドミル歩行ビデオ画像を観察させ,分回し歩行とトゥクリアランス低下の重症度を5段階評価させた結果の評価者間信頼性をCohenのκ係数を用いて検討した.また,評価者を経験年数と観察した部位・相で分け,κ係数を求めた.〔結果〕評価結果のκ係数は0.09~0.58であり,経験年数にかかわらず低かった.観察部位・相を揃えた群のκ係数も0.03~0.32と低かった.〔考察〕一致率の程度はslight~moderateにとどまり,評価者間信頼性は低かった.観察部位・相を揃えても信頼性は向上せず,評価者の主観的尺度と評価基準の相違が主な原因と思われた.視診による歩行分析の信頼性を高めるには,異常歩行を定義したうえで,明確な重症度基準を定める必要があると考えられた.
著者
博田 節夫
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.163, 1985-03-10

リハビリテーション医学が紹介されて以来,リハビリテーションは治療法の一つであるとの誤解が医療スタッフの間にさえも存在する.わが国においては,リハビリテーションは機能訓練を意味するとの考えが支配的で,機能障害を治す手段として期待されて来た.ここでいう機能障害はimpairmentおよびdisabilityであるが,治療医学的立場からimpairmentのみを指していることも多く,第2次世界大戦以前の機能再建という考え方に逆行するものである.一方,作業療法および理学療法の専門書にリハビリテーチブ・アプローチという治療法が見られる.これはdisabilityに対するアプローチを意味している.このリハビリテーチブ・アプローチはdisabilityに注目するあまり治療法放棄につながるとの非難であり,これは警鐘として受け入れるとしても,リハビリテーションが作業療法あるいは理学療法の中の一治療手段であるという妄想にまで発展するに至っては,リハビリテーションという言葉に対しても嫌悪の念を抱かざるをえない. リハビリテーション医学の治療対象は,主として運動機能障害とそれによりもたらされる能力障害である.運動機能障害は神経系および末梢運動器系の異常を反映し,その治療手段として運動療法があり,能力障害に対しては広義のADL訓練がある.ADL訓練は能力障害に対する直接的アプローチであり,治療効果の判定は比較的容易といえる.運動療法は筋・腱,骨・関節に対しては直接的な治療手段であるが,神経系に対しては末梢運動器系を介した間接的治療法であるため,治療効果の判定は困難を窮める.そのため,中枢神経疾患においては適応を考慮することなく,有効性の不明な治療法を狂信する者が増加しつつある.
著者
高橋 正雄
出版者
医学書院
雑誌
総合リハビリテーション (ISSN:03869822)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.274, 2014-03-10

昭和35年に三島由紀夫が『近代能楽集』(新潮社)の一編として発表した『弱法師』は,俊徳という盲目の青年を主人公とする戯曲である.俊徳は5歳の時に空襲の炎で両眼を焼かれて失明し,実の両親とはぐれてしまったために,その後15年間他家で養育されたのだが,養父母は,俊徳のことを,「あの子は一種の狂人です」として,その奇妙な性格を次のように語っている.「あの子の性質には,私どもにどうにも理解できない妙なところ,固い殻のようなものがあるのです」,「あの子には感動というものがないのです.実の御両親が現われたときいても,あの子はまるで感動を示しもせず,ここへ来るあいだも至極つまらなそうな顔をしていました.そうかと思うと些細なことに,急に激して手に負えなくなったり……」. 養父母は,このように俊徳の不可解な性格を語り,それを聞いた実の親は,「すっかりひねくれて育ってしまった」と慨嘆するのだが,実は俊徳には,空襲時の光景がありありと蘇るというフラッシュ・バックを思わせる症状も記されている.