著者
佐藤 裕 佐藤 清治 広橋 喜美 伊山 明宏 原岡 誠司 溝口 哲郎 片野 光男 樋高 克彦 原田 貞美 藤原 博 山本 裕士 久次 武晴
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.577-584, 1989-03-25 (Released:2010-01-21)
参考文献数
18
被引用文献数
11

1985年5月から1987年12月までの3年7ヵ月の間に,6名のシートベルトに起因する鈍的腸管・腸間膜損傷を経験したので報告する. 症例は男性5名,女性1名の計6名で,平均年齢は51.7歳であった.このうち,盲腸破裂と多発小腸穿孔をきたし,すでにshock状態におちいっていたために,回盲部切除を余儀なくされた女性を術後敗血症で失なった以外は全例軽快退院した.また大腸に損傷のあった5例中,遊離穿孔に至っていたのは2例のみで,あとの3例は腸間膜損傷をともなった腸管壁の漿膜筋層断裂にとどまっており,腸管切除をせずに吸収糸にて縫縮,修復するのみで良好な結果を得た. 診断面においては,腹部CT検査が腹腔内遊離ガスと液体貯留をあわせて同定でき,しかもその性状にも言及できる利点があり非常に有用であった. 交通事故の増加とシートベルト着用の義務化にともない,今後シートベルトによる鈍的な腸管・腸間膜損傷が増加するものと考えられる.シートベルトを着用した交通外傷患者の診療に際しては,常にこのことを念頭おくべきことを強調したい.
著者
溝口 哲郎 樋高 克彦 久次 武晴 宮原 晋一
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.1419-1422, 1989-07-25 (Released:2009-04-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2 1

慢性関節リウマチに罹患している60歳の女性が胃生検をきっかけにアミロイドーシスと診断された.この患者は,1年前に胆石症のために胆嚢摘出術をうけており,その摘出胆嚢の再検でもアミロイドの沈着が証明された.この症例は通常の胆石症と異なり,貧血,低栄養状態,下痢,腹部単純X線撮影における腸閉塞様所見などを示し興味ある経過をとった.その後,腎機能障害と徐脈を呈し,慢性関節リウマチに続発した全身性アミロイドーシスと診断された.
著者
矢ヶ部 知美 隅 健次 樋高 克彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.1, pp.70-76, 2010 (Released:2010-01-07)
参考文献数
19
被引用文献数
2

症例(1),(2) 20歳代外国人女性.肺結核の治療開始後に腹膜刺激症状が出現した.腸結核に特徴的な輪状,帯状潰瘍など多彩な形態の活動性潰瘍を認め,抗結核剤により軽快した.症例(3) 20歳代男性.肺結核治療開始直後に消化管穿孔をきたし,緊急手術を施行し救命し得た.切除標本より乾酪壊死をともなった肉芽腫および結核菌が証明された.若年成人で十分な健康管理が行われていない者には,重症結核が発症し得ることに注意すべきである.