著者
篠崎 由賀里 隅 健次 山地 康大郎 田中 聡也 佐藤 清治
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1159-1162, 2014-09-30 (Released:2015-02-04)
参考文献数
11

水上バイク事故により生じた外傷性直腸肛門損傷から縦隔気腫にまで至った1例を経験した。水上バイクの後部座席に乗船した20歳女性が振り落とされて落水。肛門部痛と気分不良を訴え,6時方向での肛門直腸の断裂を確認。胸腹部CTで肛門から直腸周囲と縦隔にまで広がるairを認め,落水した際のウォータージェット推進装置から噴き出した水による直腸裂傷,後腹膜気腫,縦隔気腫と診断した。緊急手術施行し損傷部位を縫合閉鎖,後腹膜ドレナージ,横行結腸人工肛門を造設した。術後致命的な合併症は無かったが,膀胱直腸機能障害が改善しなかったために受傷後22日目,人工肛門形成,自己導尿状態で退院。水上バイク事故による重傷損傷は増加しており,国土交通省運輸安全委員会も注意喚起している。本症例では症状は軽度であるも骨盤神経叢の損傷が疑われ膀胱直腸機能に重篤な後遺症が残る可能性もある。同様の事故を防ぐための行政対策も必要と考える。
著者
佐藤 裕 佐藤 清治 広橋 喜美 伊山 明宏 原岡 誠司 溝口 哲郎 片野 光男 樋高 克彦 原田 貞美 藤原 博 山本 裕士 久次 武晴
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.577-584, 1989-03-25 (Released:2010-01-21)
参考文献数
18
被引用文献数
11

1985年5月から1987年12月までの3年7ヵ月の間に,6名のシートベルトに起因する鈍的腸管・腸間膜損傷を経験したので報告する. 症例は男性5名,女性1名の計6名で,平均年齢は51.7歳であった.このうち,盲腸破裂と多発小腸穿孔をきたし,すでにshock状態におちいっていたために,回盲部切除を余儀なくされた女性を術後敗血症で失なった以外は全例軽快退院した.また大腸に損傷のあった5例中,遊離穿孔に至っていたのは2例のみで,あとの3例は腸間膜損傷をともなった腸管壁の漿膜筋層断裂にとどまっており,腸管切除をせずに吸収糸にて縫縮,修復するのみで良好な結果を得た. 診断面においては,腹部CT検査が腹腔内遊離ガスと液体貯留をあわせて同定でき,しかもその性状にも言及できる利点があり非常に有用であった. 交通事故の増加とシートベルト着用の義務化にともない,今後シートベルトによる鈍的な腸管・腸間膜損傷が増加するものと考えられる.シートベルトを着用した交通外傷患者の診療に際しては,常にこのことを念頭おくべきことを強調したい.
著者
篠崎 由賀里 隅 健次 山地 康大郎 田中 聡也 佐藤 清治
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.1159-1162, 2014

水上バイク事故により生じた外傷性直腸肛門損傷から縦隔気腫にまで至った1例を経験した。水上バイクの後部座席に乗船した20歳女性が振り落とされて落水。肛門部痛と気分不良を訴え,6時方向での肛門直腸の断裂を確認。胸腹部CTで肛門から直腸周囲と縦隔にまで広がるairを認め,落水した際のウォータージェット推進装置から噴き出した水による直腸裂傷,後腹膜気腫,縦隔気腫と診断した。緊急手術施行し損傷部位を縫合閉鎖,後腹膜ドレナージ,横行結腸人工肛門を造設した。術後致命的な合併症は無かったが,膀胱直腸機能障害が改善しなかったために受傷後22日目,人工肛門形成,自己導尿状態で退院。水上バイク事故による重傷損傷は増加しており,国土交通省運輸安全委員会も注意喚起している。本症例では症状は軽度であるも骨盤神経叢の損傷が疑われ膀胱直腸機能に重篤な後遺症が残る可能性もある。同様の事故を防ぐための行政対策も必要と考える。
著者
佐藤 清治
出版者
佐賀医科大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

これまで我々は、多剤耐性に最も関与している多剤耐性遺伝子MDR1の発現誘導に関し研究を続けており、種々の抗癌剤や紫外線等によってこの遺伝子の発現誘導がかかるエレメント(inverted CCAAT box)をプロモーター上に決定している。そして、これらのストレスによりこのエレメントに、ある転写因子が結合しMDR1遺伝子の発現を誘導している事実を見出していた。今年度は、サウスウエスタン法を用いてλgt 11 cDNAライブラリーよりスクリーニングを行い、この転写因子(MDR-NF1と命名)のcDNAを分離・同定した。そこでクローニング出来たMDR-NF1のDNA結合領域であるcDNAの塩基配列を決定すると、ヒトMHCクラスII遺伝子プロモーター上のY-boxに結合する転写因子YB-1と同一である事が示唆された(論文作成中)。また、この転写因子がリン酸化に関与していることこともすでに見出していた為、今回は、MDR1プロモーターの発現誘導におけるリン酸化阻害剤(H-7)の関与を調べてみた。その結果、H-7はMDR1プロモーターの発現誘導において、高濃度では紫外線や制癌剤によるMDR1promoterの発現誘導を、恐らく転写因子のリン酸化を阻害することによって抑制していることが推察され、逆に、低濃度ではMDR-NF1とinverted CCAAT boxとの結合を増すことによりMDR1promoterの発現を誘導するという、濃度特異的な2つの作用を持つことが判明した(Cellular Pharmacology,2:153-157,1995)。これにより、治療を含めた薬剤などによるこの耐性遺伝子の調節には、その使用法に詳細な検討を必要とすることが示唆された。今後この転写因子(MDR-NF1)の抗体の作製、臨床サンプルへの応用へと進める予定である。