著者
権 哲峰 ト蔵 浩和 飯島 献一 小黒 浩明 山口 修平
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.175-181, 2008 (Released:2008-04-25)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

目的:脳萎縮およびその進行に関する,無症候性脳梗塞(以下SBIと略す)や高血圧の影響について検討した.方法:脳ドックを受診した神経学的に異常のない健常成人109名(平均58.6±5.8歳)を対象とし,MRI-T1強調画像水平断で頭蓋内腔に占める脳実質の割合をBrain atrophy index(以下BAIと略す),脳断面積に占める脳室の割合をVentricular area index(以下VAIと略す)とし,それぞれ基底核と側脳室体部レベルで測定した.そして平均4.9年後に同様の測定を行い,危険因子やSBIの有無により脳萎縮の進行に差があるかを検討した.結果:年齢,性,脂質異常,肥満,喫煙歴,アルコール多飲の頻度はSBI(+)群とSBI(-)群,および高血圧群と非高血圧群で差はなかった.SBI(+)群では,基底核レベル,側脳室体部レベルともにBAIが有意に低下し(基底核レベル:p=0.02,側脳室体部レベルp=0.05),また側脳室体部レベルでのVAIも,SBI群で有意に増加していた(p=0.03).高血圧群では,基底核レベルでの初回測定時BAIは有意に低下していたが(p=0.007),側脳室体部レベルのBAI,両レベルでのVAIは非高血圧群と有意差は認められなかった.SBIや高血圧の有無による,年間のBAI, VAIの変化については有意な差がなかった.結論:無症候性脳梗塞や高血圧は,脳萎縮や脳室拡大と関連することが示唆されたが,その影響は無症候性脳梗塞の方が強いことが示唆された.