著者
佐藤 真治 横井 豊彦 都竹 茂樹 大槻 伸吾
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

【目的】人口減少社会の到来による社会保障制度の劣化を回避する処方箋の一つがソーシャルキャピタル(人のつながり、地域への信頼、社会参加)の向上である。我々は地域に歩く人が増えると、社会参加する人が増えることを確認した。一方で、身体活動増進の地域介入に経済的インセンティブを用いた戦略は、効果が限定的であった。そこで、本研究ではソーシャルネットワーク・インセンティブ(おつき合いやお互いさまの規範)を活用して、地域に歩く人が増え、ソーシャルキャピタルを向上するかどうか検証した。【方法】対象者は、65歳以上の女性44名(平均年齢72±6歳)とした。対象を無作為に割付し、経済的インセンティブのみの経済的インセンティブ群23名とソーシャルネットワーク・インセンティブに経済的インセンティブを加えたSNWインセンティブ群21名に分けた。介入期間は3ヵ月間であった。経済的インセンティブ群は、一カ月ごとの歩数が平均8,000歩以上の場合は700円/月分、1日の歩数が平均5,000歩以上の場合は500円/月分のクオカードと引き換えられるようにした。SNWインセンティブ群は、3人1組でウォーキングを実施した。最低週に1回は3人で歩く機会を持ちお互いの歩数を確認する。クオカードに関しては、経済的インセンティブ群と同様とし、チームのうち1名が目標歩数を達成すれば他のメンバーにも報酬がもたらされるようにした。【結論】地域における身体活動増進の介入として経済的インセンティブにソーシャルネットワーク・インセンティブ(おつき合いやお互いさまの規範)を加えると、身体活動量のみならず地域への信頼を高める可能性が示唆された。