- 著者
-
岸 章治
横塚 健一
- 出版者
- 群馬大学
- 雑誌
- 一般研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1994
硝子体の形態の維持における網膜の役割を解明するため、有色家兎の網膜を光凝固で破壊し、それに続発する硝子体の変化を観察した。1)幼若な家兎に光凝固で網膜萎縮巣を作成すると、3か月以降に萎縮巣の前方に硝子体の液化が生じた。14か月経過すると、硝子体液化腔はさらに明瞭となり、その輪郭は網膜の萎縮巣に一致していた。このことから眼球が成長過程にある眼では、網膜が破壊されると、それに面した硝子体に続発性の液化、もしくは硝子体の無形成がおこることが示唆された。2)光凝固をび慢性におくと、幼若家兎ではび慢性の硝子体液化が網膜前方に続発した。3)成熟家兎で、同様の実験をおこなうと、やはり同様の硝子体液化が網膜前方に続発した。したがって眼球の成長が完了した成熟家兎眼でも、硝子体の形態の維持のためには、正常な網膜が必要であることが示唆された。硝子体は再生しうるか否かを知るため、家兎眼の硝子体を切除し、12か月飼育した後に眼球を摘出した。家兎では硝子体と水晶体の癒着が強いため、冷凍プローブで水晶体嚢内全摘をすると硝子体を一塊として除去できた。しかしこの群では、網膜の全剥離が続発し、眼球癆となった。組織学的には残存硝子体の器質化と色素上皮細胞の増殖による前部増殖性硝子体網膜症(PVR)であった。硝子体の再生は起こらなかった。経毛様体硝子体切除をおこなった家兎は眼球の大きさは保存された。ゲルの切除部位は空洞化したままで、硝子体の再生は起こらなかった。家兎では人工的な後部硝子体剥離の作成が困難であった。部分硝子体剥離を生じた部分では、内境界膜は硝子体と一体化して網膜から分離していた。