著者
細貝 真弓 秋山 英雄 岸 章治
出版者
医学書院
雑誌
臨床眼科 (ISSN:03705579)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.527-532, 2008-04-15

要約 目的:光干渉断層計(OCT)で経過を追ったPurtscher網膜症の1例の報告。症例:70歳男性が自動車を運転中に電柱に衝突し,多発性肋骨骨折を生じ,その翌日に受診した。矯正視力は右0.2,左0.02で,両眼の乳頭周囲に綿花様白斑があり,左眼は乳頭黄斑間に網膜の白濁があった。OCTで両眼に漿液性網膜剝離と左眼網膜内層に高反射があった。漿液性網膜剝離は1か月後に消失した。受傷から3か月後に矯正視力は右1.0,左0.7になったが,白濁部では網膜内層が菲薄化し,視細胞の内節と外節の接合部が消失し中心暗点が生じた。結論:Purtscher網膜症の急性期では網膜の白濁と綿花様白斑が混在し,漿液性網膜剝離があった。陳旧期では網膜内層が菲薄化し,視細胞の内節と外節の接合部が消失し,中心暗点の原因になった。
著者
高橋 千里 池田 史子 坂庭 敦子 塚田 貴大 大平 陽子 岸 章治 石田 香代子 高山 秀男
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.139-143, 2009 (Released:2010-03-25)
参考文献数
9

目的:恒常性外斜視に対し、プリズム眼鏡による眼位矯正に視能訓練を併用し、両眼視機能の獲得と斜視角の減少を示す、良好な経過を得た2症例を報告する。症例:症例1:2歳女児。生後6ヵ月で外斜視を発症し、近医を経て受診した。初診時45△の外斜視で、輻湊はできず、恒常性外斜視と診断した。母親が手術を希望しなかったため、プリズム眼鏡による光学的矯正と輻湊訓練を開始した。眼位にあわせてプリズムを減量し、治療開始5年後、7歳の時点で14△基底内方のプリズム眼鏡で斜位を保っている。両眼視機能は融像まで確認できた。症例2:1歳5ヵ月男児。生後6ヵ月位から左眼が外斜視になることに母親が気付き受診した。初診時、近見40△の左眼外斜視で、屈折は右眼-5.0D、左眼-10.0Dであった。左眼は豹紋状眼底を呈していた。プリズム眼鏡による光学的矯正および、遮閉訓練と輻湊訓練を開始した。眼位に合わせてプリズムを減量した。治療開始後5年(6歳)、屈折矯正眼鏡のみで近見4△の外斜位となり、両眼視機能はTitmus stereo testsにて100秒であった。結論:恒常性外斜視に対してプリズム眼鏡による光学的治療に視能訓練を併用することで、両眼視機能の獲得と斜視角の減少を示す症例を経験した。恒常性外斜視に対しても、プリズム治療は有用と考えられた。
著者
岸 章治 横塚 健一
出版者
群馬大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1994

硝子体の形態の維持における網膜の役割を解明するため、有色家兎の網膜を光凝固で破壊し、それに続発する硝子体の変化を観察した。1)幼若な家兎に光凝固で網膜萎縮巣を作成すると、3か月以降に萎縮巣の前方に硝子体の液化が生じた。14か月経過すると、硝子体液化腔はさらに明瞭となり、その輪郭は網膜の萎縮巣に一致していた。このことから眼球が成長過程にある眼では、網膜が破壊されると、それに面した硝子体に続発性の液化、もしくは硝子体の無形成がおこることが示唆された。2)光凝固をび慢性におくと、幼若家兎ではび慢性の硝子体液化が網膜前方に続発した。3)成熟家兎で、同様の実験をおこなうと、やはり同様の硝子体液化が網膜前方に続発した。したがって眼球の成長が完了した成熟家兎眼でも、硝子体の形態の維持のためには、正常な網膜が必要であることが示唆された。硝子体は再生しうるか否かを知るため、家兎眼の硝子体を切除し、12か月飼育した後に眼球を摘出した。家兎では硝子体と水晶体の癒着が強いため、冷凍プローブで水晶体嚢内全摘をすると硝子体を一塊として除去できた。しかしこの群では、網膜の全剥離が続発し、眼球癆となった。組織学的には残存硝子体の器質化と色素上皮細胞の増殖による前部増殖性硝子体網膜症(PVR)であった。硝子体の再生は起こらなかった。経毛様体硝子体切除をおこなった家兎は眼球の大きさは保存された。ゲルの切除部位は空洞化したままで、硝子体の再生は起こらなかった。家兎では人工的な後部硝子体剥離の作成が困難であった。部分硝子体剥離を生じた部分では、内境界膜は硝子体と一体化して網膜から分離していた。