著者
阿部 宏之 横尾 正樹
出版者
山形大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究では、電気化学的呼吸計測技術を応用した非侵襲的細胞間ネットワーク解析システム構築のための基盤技術開発を目的とした。酸素の還元電位を検出するマイクロ電極をプローブとする走査型電気化学顕微鏡(SECM)をベースに高精度の細胞呼吸計測システムを構築し、哺乳動物卵子を単一細胞のモデル系に活性が極めて低い単一細胞呼吸解析システムの開発を目指し、以下の研究成果が得られた。1. 高精度単一細胞呼吸計測システムの開発と性能評価 : 単一卵子の酸素消費量(呼吸)を安定して計測できるマイクロ電極を開発した。単一細胞呼吸計測のための専用計測液を作製し、高精度マイクロ電極を装備したSECMと測定液等の要素技術を統合した「高精度細胞呼吸計測システム」の開発に成功した。2. 呼吸計測の有効性検証 : 「高精度細胞呼吸計測システム」を用いて、マウス、ウシ、ブタ等の単一未成熟卵子の呼吸量計測に成功するとともに、卵子成熟過程における呼吸量変化の解析が可能となった。生物学的解析により、呼吸計測システムの有効性が示された。3. 細胞間ネットワーク解析システムの構築 : 卵子成熟過程において、卵丘膨化に伴う卵丘細胞-卵子間相互作用と呼吸活性との関係を解析した結果、卵丘膨化に伴い卵丘細胞と卵子の呼吸能が変化することが明らかになった。