著者
小南 靖弘 横山 宏太郎
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.種々の雪質の積雪について音速および音響減衰係数の測定をおこない、雪の物性と音響特性との関係を検討した。用いた音は200Hzから1/3オクターブ刻みで8000Hzまでの正弦波である。その結果、以下のことがあきらかとなった。(1)間隙空気中を伝播する音の音速は伝播経路の屈曲度を反映している。これは積雪中のガス拡散係数における拡散経路の屈曲度と同様であるが、音の伝播は屈曲した間隙中の最短距離を通るのに対し、ガス拡散の場合は屈曲した間隙の平均的な距離を反映していることがわかった。(2)間隙空気中を伝播する音の減衰係数は粒径×気相率で求める間隙サイズ指標の二乗に反比例し、圧力変動によって生じる間隙内のマスフローの減衰と同様の現象であることが確認された。また、結合した雪粒子を伝播する音の減衰係数は積雪密度に反比例し、質量効果による遮音のメカニズムによるものと推測された。以上の結果より、音速および音響減衰係数の測定より、積雪のガス環境を決定するパラメタであるガス拡散係数や圧力変動に伴うマスフローの減衰度合いなどを推定できることがわかった。2.自然状態の積雪中の底部、内部および表面の二酸化炭素濃度の連続測定をおこない、表層近くの積雪の見かけ上のガス拡散係数が風によって増加する現象を確認した。さらに、その程度は風速の二乗と積雪表層の間隙サイズとに比例することをあきらかにした。