著者
小野寺 政行 須田 達也 荒木 英晴 木村 篤 草野 裕子 下田 星児 小南 靖弘 広田 知良 中辻 敏朗
出版者
北海道農事試驗場北農會
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.122-130, 2019 (Released:2019-11-14)

雪踏みは雪割りと同じく,土壌凍結を促進でき,野良イモ防除に有効である。雪踏みは雪割りに比べ使用機が安価で共同利用しやすいが,積雪が深い場合や傾斜地などでの実施にやや難があるため,立地条件や作付体系等を考慮して凍結深制御手法を選択する。雪踏み,雪割りに関わらず,土壌凍結深30cmを目標に制御すると,土壌物理性の改善や窒素溶脱抑制を介して圃場の生産性は向上する。土壌凍結深推定計算システムは汎用性を高め,広域で活用できるように改良した。
著者
小南靖弘
出版者
農業技術研究機構中央農業総合研究センター
雑誌
中央農業総合研究センター研究報告 (ISSN:18816738)
巻号頁・発行日
no.6, pp.15-49, 2005-03
被引用文献数
1 1

4寒候期にわたって積雪層底部におけるCO2濃度の連続測定を行うとともに,積雪層内をCO2が移動する各プロセス毎に実験・検討を行い定量化した。積雪の分子ガス拡散係数は,土壌と大気との間のガス交換に対する抵抗としての働きを評価する基本的なパラメタである。これを測定するために,非定常拡散理論に基づく分子ガス拡散係数測定装置を開発した。まず絶対値精度および境界条件の確からしさに対する検定を行った後,新雪・しまり雪・ザラメ雪の3種の自然積雪について測定を行い,相対拡散係数D Rを積雪気相率の一次式とする実験式を得た。積雪表面上を吹く風によって積雪層内の空気が乱され,積雪内と大気との間のガス交換が促進される。この効果を見積もるために,渦相関法によって観測した大気中のCO2フラックスと積雪層内のCO2濃度勾配より,積雪内の乱流ガス拡散係数を得た。さらにこれを風速および積雪深の関数として求める推定式を作成した。積雪表面で生じた融雪水が積雪内を流下する際,積雪間隙中のCO2が溶解されるため,融雪期には積雪層内のCO2濃度は低下する。この溶解の効率を表わす指標として,輸送理論から導かれる溶解係数α'を導入した。積雪層底部CO2濃度および融雪水中の溶存CO2量の測定値よりα'の平均的な値を求めた。以上のように検討した各プロセスを統合して,積雪内のCO2濃度を再現する数値モデルを構築した。モデルは土層と積雪層から成る2層の一次元モデルで,積雪深・積雪重量・融雪量・風速,および別途見積もったCO2発生強度(土壌呼吸活性)を入力し,積雪内の任意の深さのCO2濃度,あるいは移動量を出力する。先に述べた4寒候期の連続観測のデータと比較した結果,良好な一致が見られた。本モデルおよび各プロセスの検討結果は,CO2にとどまらず,積雪と大気との各種物質交換に広く応用しうるものだと思われる。
著者
大野 宏之 横山 宏太郎 小南 靖弘 井上 聡 高見 晋一 WIESINGER Thomas
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.225-231, 1998-05-15
被引用文献数
17 13

気象庁で使用されているRT-1, RT-3, RT-4型の転倒桝降水量計について,固体降水に対する捕捉率を新潟県上越市において2寒候期にわたり観測した.捕捉率の計算に必要な真の降水量は,WMO「固体降水の比較観測に関する国際組織委員会」が定めた方法に準じて推定した.観測の結果,固体降水の捕捉率はいずれの降水量計でも風速が強いほど減少し,風速4mにおいては無風時の60%程度であった.減少の程度は,RT-3, RT-1, RT-4の順で大きかった.準器に着雪が発生するなど,国際組織委員会が定めた方法は,北陸地方の降雪の特性には必ずしも良く対応していない点があることが観察された.
著者
佐藤 和秀 亀田 貴雄 石井 吉之 的場 澄人 高橋 一義 石坂 雅昭 竹内 由香 横山 宏太郎 小南 靖弘 川田 邦夫 渡辺 幸 飯田 俊彰 五十嵐 誠 竹内 望
出版者
長岡工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

北海道から本州の山形県,新潟県,富山県にいたる冬期の降積雪試料を採取し,主に酸性雪に関する化学特性の解析を行い,その実態の調査研究を実施した。報告例が少ない降積雪の過酸化水素濃度に関する多くの知見が得られた。より明確な因果関係の把握にはさらなる観測調査が必要であるが,大気汚染物質あるいは積雪の主要イオン濃度,過酸化水素濃度,pH,黄砂,雪氷藻類などの間にはいくつかの相関関係が見られ,融雪水のイオンの選択的溶出も観測された。
著者
小南 靖弘 横山 宏太郎
出版者
独立行政法人農業技術研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

1.種々の雪質の積雪について音速および音響減衰係数の測定をおこない、雪の物性と音響特性との関係を検討した。用いた音は200Hzから1/3オクターブ刻みで8000Hzまでの正弦波である。その結果、以下のことがあきらかとなった。(1)間隙空気中を伝播する音の音速は伝播経路の屈曲度を反映している。これは積雪中のガス拡散係数における拡散経路の屈曲度と同様であるが、音の伝播は屈曲した間隙中の最短距離を通るのに対し、ガス拡散の場合は屈曲した間隙の平均的な距離を反映していることがわかった。(2)間隙空気中を伝播する音の減衰係数は粒径×気相率で求める間隙サイズ指標の二乗に反比例し、圧力変動によって生じる間隙内のマスフローの減衰と同様の現象であることが確認された。また、結合した雪粒子を伝播する音の減衰係数は積雪密度に反比例し、質量効果による遮音のメカニズムによるものと推測された。以上の結果より、音速および音響減衰係数の測定より、積雪のガス環境を決定するパラメタであるガス拡散係数や圧力変動に伴うマスフローの減衰度合いなどを推定できることがわかった。2.自然状態の積雪中の底部、内部および表面の二酸化炭素濃度の連続測定をおこない、表層近くの積雪の見かけ上のガス拡散係数が風によって増加する現象を確認した。さらに、その程度は風速の二乗と積雪表層の間隙サイズとに比例することをあきらかにした。