著者
横田 進 天野 直樹 糸井 正枝
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.225-233, 2017-05-25 (Released:2017-05-31)
参考文献数
16

Jerk-locked back averaging(JLA)は,誘発電位測定装置を用いて測定中に出現したミオクローヌスによって生じる筋収縮をトリガーし,その前後の脳波を加算平均する解析法である。我々は,既に記録したビデオデジタル脳波からJLA解析を行う独自ソフトウエアを開発した。本論文の目的は,このJLA解析ソフトウエアの有用性について検討することである。対象は,Dravet症候群の8か月女児(症例1)と不随運動が認められた11歳5か月女児(症例2)のビデオデジタル脳波とした。JLA解析は,以下の手順に従った。1)ビデオデジタル脳波記録を再生する。2)ミオクローヌス様の不随運動が認められる部分の筋電図の立ち上がりをonsetとする。3)onsetの同位相の前後140 msの脳波を加算平均処理する。症例1は,onsetの約60 ms前に約20~30 μVの陰性波が存在することから皮質性ミオクローヌスが示唆された。しかし,症例2には,有意な脳波変化は認められなかった。ビデオデジタル脳波記録データを用いたJLA解析は,誘発電位測定装置を用いた解析と同様に皮質性ミオクローヌスの診断の補助となり,我々が独自に開発した解析ソフトウエアは,特に測定が難しい小児において有用である。