著者
横関 利子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.459-466, 1993 (Released:2009-11-16)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

1) 本研究は, 寝たきり老人の基礎代謝量を明らかにするとともに, 一般老人との比較を行うことにより寝たきり老人のエネルギー所要量を検討することを目的として行った。対象者は東京都内の特別養護老人ホームおよび養護老人ホームに入所している寝たきり老人10名と一般老人14名の女性であった。2) 寝たきり老人の身長と体重は, 一般老人と比べて統計的な差がなかったが, 除脂肪体重は有意に低かった。血中のHDL-コレステロール, カルシウム, および鉄濃度は寝たきり老人では有意に低く, とくにカルシウム濃度は正常範囲よりもかなり低い値を示していた。3) 寝たきり老人の基礎代謝量は, 一般老人よりも有意に低く, その値は22.5±5.Okca1/m2/時, 16.9±3.9kca1/kg/日, 23.9±5.0 kca1/LBM/日, および636.3±166.4kca1/日であった。これらの値は一般老人よりも20~30%低下していた。さらに, 基礎代謝量は基礎代謝基準値を用いて求あた推定値との間に相関関係を示さなかった。4) エネルギー消費量とエネルギー摂取量は, 寝たきり老人のほうが有意に低く, その値は一般老人よりも30%低下していた。寝たきり老人ではエネルギー消費量と摂取量の間に相関関係が認められなかった。5) 現在の基礎代謝量推定量を用いて算出するエネルギー所要量とエネルギー消費量との出納バランスがとれているエネルギー量は, 寝たきり老人で1,053kcalとなった。また, 算出されるエネルギー所要量が1,053kca1を基準に10%多く見積もられるごとに, 真のエネルギー必要量は57kcal少なくなることが認められた。