著者
石原 寛治 田中 肖吾 橋場 亮弥 大畑 和則 上西 崇弘 山本 隆嗣
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.1223-1226, 2013-11-30 (Released:2014-02-05)
参考文献数
13

要旨:症例は30代の男性。3日前,左下腹部鼠径靭帯頭側を圧挫し出張先で近医受診,腹部所見・腹部X線検査で異常なく自宅安静となったが腹痛と発熱が増強し当院受診した。循環動態は安定し左下腹部の鈍的外傷痕も軽微であったが,腸蠕動音減弱と腹部全体の筋性防御を認めた。腹部単純X線・CT検査で両横隔膜下・S状結腸間膜側に遊離ガス像を認め下部消化管穿孔を疑い緊急開腹手術施行した。糞便による汚染はほとんどなく肉眼的にS状結腸間膜側の穿孔は1cm程度であったが,挫滅穿孔部を含めS状結腸部分切除し一期的端々吻合した。切除標本の検索で穿孔は間膜側半周におよんでいた。腹部鈍的外傷が軽微で受傷早期に消化管穿孔の所見がなくとも,腸間膜側損傷の場合は遅れて所見が出ることがあり,経時的腹部所見の観察が必要である。
著者
橋場 亮弥 藤原 有史 李 栄柱 岸田 哲 形部 憲 大杉 治司
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.78, no.9, pp.2040-2044, 2017 (Released:2018-03-31)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

傍気管嚢胞(paratracheal air cyst)は,第1~第3胸椎レベルの気管右側に好発する,比較的まれな良性の嚢胞性疾患である.われわれは術前CTで傍気管嚢胞を診断した3例の食道癌手術症例を経験した.いずれの症例も嚢胞が右反回神経周囲リンパ節を郭清する過程で同定され,郭清手技に注意を要した.傍気管嚢胞は術前にその存在を認識していなければ,術中にリンパ節と判別することが難しい形状やサイズであり,認識なく術中に遭遇すれば嚢胞損傷の危険性が高いと考えられた.胸部食道癌手術において左右反回神経周囲リンパ節郭清は重要であり,食道癌の術前評価では傍気管嚢胞も念頭に置くことは重要であると考えられた.