著者
橋本 光広
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

小脳の変性を伴う疾患では、重篤な睡眠障害(不眠症・レム睡眠行動障害・睡眠時無呼吸症候群など)を伴うことが知られている。しかし、現在の基礎研究成果では、「なぜ、小脳が変性すると睡眠障害が起こるのか」を説明することができない。そこで、小脳と睡眠調節を関連付ける脳内の神経回路を解明することによって、小脳が変性すると睡眠障害が起こる神経基盤を明らかにする。このことは、今まで知られていない、小脳の新たな生理機能・神経システムを示すことである。
著者
橋本 光広
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

多くの解剖学的・生理学的・分子生物学的研究によって、小脳は正中線を軸にして内側から外側方向へ左右対称の縦縞状の区画に領域化されていることが示された。そこで、小脳の縦縞状の領域は小脳における機能区分と考えられ、小脳の神経回路網の形成と小脳の機能発現における基礎的構造単位であると考えられるようになった。しかし、最も基本的な疑問である、「小脳の領域化が、いつ起こり、何によって規定されているか。」は、解明されていなかった。そこで、アデノウイルスベクターによる神経細胞の誕生日特異的遺伝子導入法を用い、小脳における縦縞状領域の形成過程を解析した。その結果、小脳の縦縞状領域化は、小脳プルキンエ細胞の発生する時期(誕生日)に依存して形成されることが判明した。アデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入は、神経細胞の発生・分化、脳の機能を解析する上で大変有利である。この技術を用いれば、小脳において、ある特定の縦縞状領域に遺伝子を導入することができる。我々は、薬剤によって神経細胞を殺すことのできる遺伝子を発現するアデノウイルスベクターならびに、神経細胞の生理的活性を変化させる遺伝子を発現するアデノウイルスベクターを作製した。前者のアデノウイルスベクターを用いれば、同一の誕生日を有するプルキンエ細胞群を殺すことができる。または、後者のアデノウイルスベクターを用いれば、ある特定の縦縞状領域の生理活性を人為的に改変することができる。このように、小脳において、ある特定の縦縞状領域の機能を改変することにより、小脳における縦縞状領域の生理学的意義を詳細に解析している。