著者
高岡 克宜 鶯 春夫 岡 陽子 唐川 美千代 平島 賢一 別部 隆司 嶋田 悦尚 橋本 安駿 橋本 マユミ 大庭 敏晴
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.F0898-F0898, 2006

【はじめに】<BR> 現在、理学療法分野では腰痛軽減を図る上で様々な物理療法や徒手療法が行われている。当院においては徒手療法を中心に治療を行っているが関節周囲軟部組織の伸張や関節モビライゼーション効果を目的に腰椎間歇牽引器(以下;従来型)を用いて牽引療法も施行している。今回、自重牽引器である浮腰式アクティブ運動療法腰痛治療器プロテック(以下;プロテック)を施行する機会を得たので従来型と比較し、その効果を検討した。<BR>【対象および方法】<BR> 平成17年6月現在の当院職員71名に対し腰痛に関するアンケート調査を行い、腰痛を有しているが整形外科疾患を有していないため治療を行っていない者15名(性別:男性5名、女性10名、平均年齢42.7±13.1歳)を対象とした。なお、対象者に安静時痛や夜間時痛を有する者はなかった。<BR> 方法は対象者を無作為にプロテック群7名、従来型群8名の2群に分け、プロテック群は開始14分間を股・膝関節90°屈曲位、残り1分間を股関節90°屈曲・膝関節完全伸展位で牽引を施行した。違和感が出現した場合は膝関節完全伸展位での牽引を止め、痛みが出現した場合は中止した。従来型群はORTHOTRAC OL-2000(OG技研)を腰椎介達動力牽引の治療肢位で使用し牽引力は体重の1/3、牽引持続時間10秒、休止時間5秒で、15分間施行した。両群とも週2回の頻度で6週間施行した。評価として日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(以下;日整会判定基準)、指床間距離(以下;FFD)、Visual analog scale(以下;VAS)を牽引前、3週間後、6週間後に行い最後にアンケート調査を行った。なお、対象者には本研究に関して十分な説明と同意を得た。<BR>【結果】<BR> 牽引前と6週間後の結果を比較すると、プロテック群の日整会判定基準の平均値は24.0±2.2点から26.5±1.1点、VASは4.8±2.4から2.0±1.5、FFDは2.2±12.0 cmから2.2±11.5cmであった。従来型群の日整会判定基準の平均値は24.0±3.8点から26.8±2.1点、VASは3.6±2.6から1.0±1.3、FFDは3.0±13.9 cm から5.6±14.0cmであった。上記の結果より、両群共に改善が認められたがFFDにおいては従来型群のみに改善を認めた。また、アンケート結果では肯定的回答が両群で4名ずつ得られた。なお、プロテック群では初回牽引後に1名、従来型群では2週間以内に3名、腰痛が出現し牽引を中止した。<BR>【考察】<BR> 両群共に腰痛軽減効果が認められた反面、疼痛が出現し悪化した者も認められた。また、本研究においては症例数が少なかったため統計学的にも両群の差を認めることが出来なかった。今後は牽引肢位や牽引力、骨盤傾斜角度等の検討を行うとともに、症例数を増やし両群の適応を再検討する必要性が示唆された。