著者
田邉 和孝 杉本 真一 久保田 豊成 久保田 恵子 影山 詔一 高村 通生 小川 晃平 武田 啓志 橋本 幸直 徳家 敦夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.92-99, 2014-02-01 (Released:2014-02-11)
参考文献数
49

症例は47歳の男性で,前日からの腹痛の増悪,嘔吐の出現,意識レベル低下にて救急搬送となった.来院時,意識レベルIII-200(JCS),血圧測定不能,血液ガス検査で代謝性アシドーシス認め,ショック状態であった.腹部造影CTにて腹腔内に多量の遊離ガスと腹水を認め,肝臓と腎臓実質の造影効果は不良であった.消化管穿孔に起因するショック状態と診断し,緊急開腹手術を施行した.多量の汚染腹水,遊離ガス,食物残渣を認め,肝臓は虚血性変化を呈していた.胃底部から体部前壁に壊死を伴う破裂部を認めたため,胃全摘術を施行した.成人の特発性胃破裂はまれであり,過食などによる胃拡張状態に,嘔吐などに伴う胃内圧の急激な上昇や,あるいは胃壁の血流障害に伴う壊死が原因とされている.破裂孔が大きいため,胃内容物の腹腔内流出量が多く,腹部コンパートメント症候群を呈し重症化することがあり,一般的に予後不良とされている.