著者
繁本 憲文 坂下 吉弘 高村 通生 小倉 良夫 近藤 成 金 啓志
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.2712-2715, 2005-11-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
14
被引用文献数
3 2 1

椎茸による食餌性イレウスを経験したので報告する.症例は73歳,女性.急性虫垂炎にて虫垂切除術の既往がある.平成16年7月5日頃より眩量,悪心,嘔吐を主訴に外来にて輸液加療されていた. 7月9日より腹痛を伴うようになり,イレウスの診断にて外科紹介となった.腹部CTにて胃,小腸の拡張を認め,拡張した小腸の先端にairとfatの濃度が混在した塊状物を認めた.消化管異物あるいは小腸腫瘍性病変の嵌頓によるイレウスと診断し,ロングチューブを挿入し保存的治療を開始した.しかし,翌日も症状がほとんど改善しないため,開腹手術を施行した. Treitz靱帯より130cmの回腸に嵌頓した椎茸の笠を摘出した.文献的に種々の食物が原因となりイレウスを引き起こすことが知られているが,椎茸が原因となってイレウスをひきおこした例は,本例以外に過去9例が報告されるのみである.文献的考察を含めて報告する.
著者
田邉 和孝 杉本 真一 久保田 豊成 久保田 恵子 影山 詔一 高村 通生 小川 晃平 武田 啓志 橋本 幸直 徳家 敦夫
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.92-99, 2014-02-01 (Released:2014-02-11)
参考文献数
49

症例は47歳の男性で,前日からの腹痛の増悪,嘔吐の出現,意識レベル低下にて救急搬送となった.来院時,意識レベルIII-200(JCS),血圧測定不能,血液ガス検査で代謝性アシドーシス認め,ショック状態であった.腹部造影CTにて腹腔内に多量の遊離ガスと腹水を認め,肝臓と腎臓実質の造影効果は不良であった.消化管穿孔に起因するショック状態と診断し,緊急開腹手術を施行した.多量の汚染腹水,遊離ガス,食物残渣を認め,肝臓は虚血性変化を呈していた.胃底部から体部前壁に壊死を伴う破裂部を認めたため,胃全摘術を施行した.成人の特発性胃破裂はまれであり,過食などによる胃拡張状態に,嘔吐などに伴う胃内圧の急激な上昇や,あるいは胃壁の血流障害に伴う壊死が原因とされている.破裂孔が大きいため,胃内容物の腹腔内流出量が多く,腹部コンパートメント症候群を呈し重症化することがあり,一般的に予後不良とされている.
著者
橋本 泰司 坂下 吉弘 高村 通生 岩子 寛 渡谷 祐介 繁本 憲文 金 啓志
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.225-230, 2005 (Released:2011-06-08)
参考文献数
17
被引用文献数
7 2

門脈ガス血症はまれな病態で, 開腹術を要する予後不良な徴候と考えられてきた. 我々はそれぞれ手術と保存的治療を行った腸管虚血を伴わない2症例を経験した.症例1 は78歳の男性で, 腹痛を主訴に受診し, 来院後下血を認めた. 腹部CTで小腸の拡張と回盲部の著明な壁肥厚, 門脈ガスを認めた. 腸管虚血を伴うイレウスを疑い, 緊急手術を施行した. 術中所見は, 腸管には虚血性変化を認めず, 試験開腹で終了した. 術後の下部消化管内視鏡検査で, 回盲部に多発性潰瘍を認めた. 症例2は95歳の女性で, 排便時に突然下腹部痛が出現した. 腹部CTで門脈ガスと上行結腸の著明な拡張を認めた. 発症46時間後の腹部CTでは門脈ガスは消失し, 保存的治療で回復した. 本症の存在自体は必ずしも重篤な病態を意味せず, 保存的治療でも改善する場合があることを考慮し, 治療方針の決定にはその成因を十分に考察することが重要である.