著者
尾身 葉子 安田 秀光 橋本 政典 清水 利夫
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1841-1844, 2005-08-25 (Released:2009-01-22)
参考文献数
21
被引用文献数
1

Radial scarは線維性結合組織からなる中心部分を機軸として乳管が放射状に配列し,その上皮に過形成変化を伴う病変である.癌との鑑別がしばしば困難で,異型過形成を伴う場合は乳癌発生のリスクとなる.その報告例は未だ少ない.今回われわれはradial scarの1例を経験したので報告する.症例は41歳,女性.左乳房痛を認め,当科を受診.左乳房C領域,疼痛部位よりやや内側に硬結を触知した.エコーにて同部位に境界不明瞭な後方エコーの減衰を伴う低エコー領域を認めた.マンモグラフィーではdistortionが認められた.穿刺吸引細胞診を施行したところ二相性の増殖性変化のみられる上皮が採取されClass IIIaであった.針生検では二相性の保たれた乳管上皮の乳頭状増殖が認められ,乳管内乳頭腫が疑われた.悪性の可能性を考慮し,確定診断のため左乳腺腫瘤切除術を施行した.病理組織診断はradial scarであった.
著者
東園 和哉 三宅 大 矢野 秀朗 橋本 政典
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.8, pp.2052-2056, 2015

症例は59歳,女性,腹部腫瘤を主訴に当院を受診した.造影CTでは,左腎臓を内包し,内部は脂肪を示唆する低吸収域を主体とし,一部に不均一な高吸収を示す充実性腫瘤を認めた.画像所見から,後腹膜脱分化型脂肪肉腫と診断した.術中所見にて膵・横行結腸に直接浸潤が疑われ,腫瘍切除とともに左腎摘出,膵体尾部脾合併切除,および横行結腸部分切除術を施行した.摘出標本は3,500g,病理診断で脱分化型脂肪肉腫と診断された.大動脈剥離面で断端陽性であったが,肉眼的に切除しえたと考え経過観察とした.術後1年目の造影CTで右肺野に結節影を認め,転移が疑われたため右上葉区域切除を施行した.術後病理で脱分化型脂肪肉腫の肺転移と診断された.その後,再発・遠隔転移など新出病変を認めていない.術後単発肺転移再発をきたしたが切除し,局所再発および肺転移再再発なく経過している脱分化型脂肪肉腫は稀であることから,文献的考察を加えて報告する.
著者
神森 眞 小川 利久 橋本 政典 小長谷 一郎 大原 毅 佐々木 毅
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.717-721, 1996-03-01
被引用文献数
5

本邦における食道異所性胃粘膜島の発生頻度は男性4.0%,女性2.6%でその大部分は食道入口部近傍に存在するとされている.しかし,上部食道の異所性胃粘膜島より発生した腺癌の本邦報告例は,検索しえた限りでは5例のみであり,極めてまれである.症例は,74歳の女性.特記すべき既往歴,家族歴なし.平成5年12月27日上腹部不快感生じ,精査のため平成6年1月17日当院入院する.上部消化管X線検査にて,頚部食道に3cm大の有茎性腫瘍を認め,さらに上部消化管内視鏡検査にて,切歯列より約14cmの頚部食道後壁左側に,山田III型ポリープ様病変をみとめた.生検の結果は,乳頭状腺癌であった.また,超音波内視鏡検査にてこの腫瘍の深達度はmmと考えられた.平成6年2月15日,腫瘍を含めた頚部食道粘膜切除術を施行した.病理組織学的には,異所性胃粘膜島より発生した高分化腺癌と考えられた.今回,我々は外科的粘膜切除術で根治がえられたと考えられる極めてまれな早期頚部食道腺癌を経験したので,文献的考察を加え報告する.