著者
櫻井 剛 高須 晃
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.XIII-XIV, 2001 (Released:2010-11-26)
参考文献数
2
被引用文献数
1

三波川帯は高圧型変成帯であるが藍晶石の産出は比較的まれであり, 四国中央部の高変成度部に分布するいくつかのテクトニック・ブロックから報告されているのみである(第1図). 今回, 四国中央部三波川変成帯の“いちのまつこ谷”上流の五良津東部岩体中から長径約16cmに達する藍晶石の巨晶が発見された(第2~5図). 五良津東部岩体は, 原岩が層状はんれい岩であり, グラニュライト相→高温のエクロジャイト相→藍閃石片岩相→低温のエクロジャイト相という変成履歴を経た後, 現位置にテクトニック・ブロックとしてもたらされ, 緑れん石角閃岩相の変成作用(三波川変成作用)を受けたと考えられている(Takasu, 1989). 藍晶石の巨晶は, 緑れん石角閃岩相の鉱物組合せよりなる岩石の片理面と斜交するすべり面上に形成されている. このことから, 藍晶石は五良津東部岩体が緑れん石角閃岩相の変成作用が進行していた三波川変成帯の現位置ヘテクトニック・ブロックとしてもたらされる前後の時期に形成されたといえる.