著者
葉梨 輝 金野 俊洋 櫻井 敏博 今川 和彦
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.214-220, 2009 (Released:2009-12-08)
参考文献数
28

レトロウイルスは新しい遺伝子を取り込み,その機能を獲得,発揮することが出来る.実際,レトロウイルスの一種であるラウス肉腫ウイルスは宿主に感染することによって,宿主の持つがん遺伝子srcを取り込み,それを自らのゲノムの一部にしたことは良く知られている.このようにレトロウイルス側が宿主細胞側の遺伝子を取り込み利用することが可能であれば,それとは逆に,細胞生物側がレトロウイルス由来の遺伝子を取り込んで利用することがあっても不思議ではない.脊椎動物のゲノム上にはレトロウイルス由来と思われる配列が数多く存在しており,内在性レトロウイルス(Endogenous Retrovirus, ERV)と呼ばれている.そして,それら遺伝子の発現は,哺乳類において特徴ともいえる“胎盤”で高いことが知られている.このようなレトロウイルス由来タンパクの組織特異的な発現とその機能を考えれば,レトロウイルス由来の遺伝子が胎盤の形成機構に関与している可能性は高い.本論文では,哺乳類,特にヒトにおける胎盤形成のメカニズムと内在性レトロウイルスの関係について,胎盤に発現するERV由来タンパクsyncytinを中心に,今後の展望を交え述べていく.
著者
竹内 咲恵 ラン トラン ソニア ボーランド 市原 学 サンドラ ブラニッチ 渡邊 英里 長田 百合果 平野 明穂 櫻井 敏博 佐藤 聡 市原 佐保子 ウ ウェンティン
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.45, pp.P-70, 2018

<p>【背景・目的】</p><p>ナノテクノロジーが発展途上にある現在、その基盤となっているナノマテリアルの特性と生体影響との関係を明らかにすることは、安全なナノマテリアルを開発するため、あるいは安全に使用するために必要である。ナノマテリアルの中でも多く用いられているシリカナノ粒子(SiO<sub>2</sub>NPs)にカルボキシル基、アミノ基、水酸基を付加してマウスの肺に曝露し、肺胞洗浄液中のマクロファージ、好中球の数をカウントしたところ、水酸基を付加したSiO<sub>2</sub>NPs(OH-SiO<sub>2</sub>NPs)を曝露したときのみマクロファージや好中球が他の2種類の粒子よりも少なかったことが先行研究より明らかになっている。また、OH-SiO<sub>2</sub>NPsはマウスマクロファージ細胞株RAW264.7細胞への曝露において、細胞生存率を著しく低下させたことも明らかになっている。そこで本研究では、それがアポトーシスによるものであると仮説を立て、経時的にLDHとCaspase-3,Caspase-7の活性を測定することにより検討を行った。</p><p>【方法】</p><p>マウスマクロファージ細胞株RAW264.7を96wellプレートに15,800 cells/cm<sup>2</sup>で播種した。37℃、5%CO<sub>2</sub>で24時間培養後、メディウム中に分散させたOH-SiO<sub>2</sub>NPsを19.5 µg/mLの濃度で曝露し、曝露から1,6,12,18,24時間後にLDH活性を、0,6,12,18時間後にCaspase-3,Caspase-7の活性を測定した。</p><p>【結果】</p><p>LDH活性、Caspase-3,Caspase-7の活性は共にOH-SiO<sub>2</sub>NPs曝露後6~18時間で著しく増加し、相関していた。</p><p>【考察・結論】</p><p>LDH活性の測定結果から、OH-SiO<sub>2</sub>NPs曝露後6~18時間の間に細胞障害、あるいは細胞死が起こっていると考えられる。また、同じタイミングでCaspase-3,Caspase-7の活性が上昇していることから、OH-SiO<sub>2</sub>NPsがアポトーシスを誘導すると考えられる。</p>
著者
葉梨 輝 金野 俊洋 櫻井 敏博 今川 和彦
出版者
日本哺乳動物卵子学会
雑誌
Journal of mammalian ova research = 日本哺乳動物卵子学会誌 (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.214-220, 2009-10-01
参考文献数
28
被引用文献数
1

レトロウイルスは新しい遺伝子を取り込み,その機能を獲得,発揮することが出来る.実際,レトロウイルスの一種であるラウス肉腫ウイルスは宿主に感染することによって,宿主の持つがん遺伝子srcを取り込み,それを自らのゲノムの一部にしたことは良く知られている.このようにレトロウイルス側が宿主細胞側の遺伝子を取り込み利用することが可能であれば,それとは逆に,細胞生物側がレトロウイルス由来の遺伝子を取り込んで利用することがあっても不思議ではない.脊椎動物のゲノム上にはレトロウイルス由来と思われる配列が数多く存在しており,内在性レトロウイルス(Endogenous Retrovirus, ERV)と呼ばれている.そして,それら遺伝子の発現は,哺乳類において特徴ともいえる"胎盤"で高いことが知られている.このようなレトロウイルス由来タンパクの組織特異的な発現とその機能を考えれば,レトロウイルス由来の遺伝子が胎盤の形成機構に関与している可能性は高い.本論文では,哺乳類,特にヒトにおける胎盤形成のメカニズムと内在性レトロウイルスの関係について,胎盤に発現するERV由来タンパクsyncytinを中心に,今後の展望を交え述べていく.<br>