著者
翠 輝久 河原 達也 正司哲朗 美濃導彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.3602-3611, 2007-12-15

音声が主要なモダリティである環境において,自然言語で記述された文書を知識源として,インタラクティブにユーザに情報を提供する枠組みを提案する.これは,現在のオーディオガイダンスのように,システム側から一方的に情報を提示するのではなく,ユーザ・システム双方が対話の主導権をとりながら,インタラクティブに情報検索・提示するものである.そのために,ユーザ主導の検索・質問応答(pull)モードと,システム主導の提示(push)モードを用意して,ユーザの状態に応じてこれらを切り替える.検索・質問応答モードでは,漠然とした検索要求に対して文書を要約して提示したり,特定の情報・事実を求める質問に応答したりする機能を実装した.また,提示モードにおいては,システム側から,ユーザにとって有用な話題を動的に選択して,質問形式を用いて提示する方法を考えた.以上の枠組みを,顔認証機能を有するロボットエージェントに統合し,京都の観光案内システムとして,京都大学博物館の企画展示において運用を行った.3 カ月の運用期間中,のべ2 500人のユーザの利用があった.収集された対話を分析・評価した結果,提案手法がおおむね有効に機能していることを確認した.