- 著者
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須藤 克仁
角所 考
美濃導彦
- 雑誌
- 情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
- 巻号頁・発行日
- vol.43, no.12, pp.3632-3642, 2002-12-15
仮想物体操作におけるユーザへのリアルな視覚フィードバックの実現を目的として,仮想柔軟物体のモデルパラメータを,現実物体の観測結果から獲得する手法について議論する.従来から,mass-springモデル等を用いて,布をはじめとする様々な柔軟物体がモデル化されているが,このようなモデル化では,モデルパラメータの値は,人間がモデルの形状を確認しながら手動で設定する必要があり,労力が大きい.また,モデルパラメータの値は通常,物体全体にわたって同一であると仮定されるため,実現された形状が均質すぎてリアリティに欠ける場合も多い.本研究では,仮想物体に対する操作を現実世界において実行し,その観測結果に基づいて,現実物体と同一の見え方を再現できるようなモデルパラメータの値を求めることにより,ユーザによる物体操作に対してリアルな視覚フィードバックを実現できる仮想物体モデルを獲得することを目指す.このための第1歩として,本稿では,線状の柔軟物体の2次元平面上での操作に対する静止形状を再現する処理について述べる.具体的には,線状の柔軟物体の伸びや曲げに対する特性を1次元mass-springモデルを用いて表現し,モデルが観測形状を静止・安定状態として持つようにモデルパラメータの値を定める.本手法を用いて実際のひもの形状を再現する実験を行い,適切なパラメータが獲得できることを確認した.