著者
林 雄二 村井 章夫 野老山 喬 菅 隆幸 後藤 俊夫 磯江 幸彦 正宗 直
出版者
大阪市立大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1987

天然性のイリドイド、ゲニビンを原料にして、多くの多官能性イリドイド及びセコイリドイド類の合成を達成した(磯江)。皮膚刺戟性があり発癌プロモ-タ-として注目を集めているテレオシジンの全合成をおこなった。インド-ル環に直接置換基を導入する新しい方法で、インドラクタムVおよびテレオシジンB3及びB4を合成した(後藤)。環状モノテルペノイド生合成の際に、ゲラニル2-リン酸(GPP)は、(i)環化酵素内で2-リン酸基を引抜かれてリナリル状のカチオンを発生すること、(ii)酵素内で発生するカチオンは、植物種に特異的なConfigurationをもっていることを明らかにした(菅)。2-(6'-シリル-4'-キセニル)-3'、4'-ジメチル-2-シクロヘキセノンの2'位にかさ高い置換基(シリル基あるいはアルコキシカルボニル基)をもつ基質の環化による8,9-ジメチル基をもつクレロダン骨格の合成を検討した(野老山)。さきに開発した鎖状ポリエン環化剤を用いて、センダン科Lansium domesticumの抗アレルギ-性セコオノセラノイドのアグリコンLansiolic acidを合成した。同じ植物の種子の二重転位形リモノイドを構造決定し生合成経路を推定した。又、同植物の魚毒成分アファナモ-ルAを、分子内光環化により生じるブルボナン形中間体を経て合成する経路を検討した(林)。ジャガイモ塊茎組織はジャガイモ疫病菌あるいはアラキドン酸を接種されると過酸化水素を発生し、これに伴ってフィトアレキシンの蓄積が誘導される。人為的に過酸化水素で処理してもフィトアレキシン生成は誘導されるので、過酸化水素はジャガイモでのフィトアレキシン生成の直接の引金物質であることがわかった。同様の現象は、サツマイモ、インゲン、サトウダイコンでも見出された。ジャガイモを用いてフィトアレキシンの内因性エリシタ-の実在をはじめて証明すると共に、その単離研究をおこなった(村井)。