著者
武井 尊也 杉谷 嘉則 天野 力 西本 右子
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.45, no.10, pp.903-908, 1996 (Released:2010-01-15)
参考文献数
11
被引用文献数
12 13

溶液のミクロ構造を解明するため,その比誘電率εrを共振周波数fRの変化を通じて測定する簡便な手法を提案した.測定方法の原理を示し,解析法の妥当性を検討した.アルコール水溶液では水のモル分率Xwの増加に従い, 共振周波数は低周波側へシフトしていくが,Xw=0.85付近で飛躍が生じ, それ以後濃度変化に依存せずほぼ一定となることが分かった.アルコール-アルコール混合溶液では, 溶液温度によって不連続的に共振周波数が変化しており,アルコール分子同士の会合状態の変化が生じていることを示唆している.本報で提案した簡便な装置で観測されるfRの変化,すなわちεrの変化は,溶液中での極性分子の分散あるいは会合状態の変化に鋭敏であり,溶液のミクロ構造を解明するのに有用な情報を与える可能性を示している.
著者
影島 一己 武井 尊也 杉谷 嘉則
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.237-243, 2006-04-05
参考文献数
18

高周波分光法を用いてエマルションの安定性評価を試みた.油/水(O/W)型エマルションに対する測定結果から,かくはん速度や保存温度が共振周波数の経時的な変化に影響を与えることが分かった.また共振周波数の高周波側へのシフトの挙動は,光学顕微鏡を用いた粒子径観察の結果とよい相関を示し,本法がエマルションの分離進行によって生じるクリーミングを鋭敏に検出していることが明らかになった.一方,W/O型エマルションや市販のエマルション製品に対する測定においても経時にともなう共振周波数の変化が観測された.このことから本法はO/W型エマルションだけではなく,W/O型エマルションや多成分系エマルションの安定性評価においても適用可能であることが明らかになった.