著者
影島 一己 武井 尊也 杉谷 嘉則
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.237-243, 2006-04-05
参考文献数
18

高周波分光法を用いてエマルションの安定性評価を試みた.油/水(O/W)型エマルションに対する測定結果から,かくはん速度や保存温度が共振周波数の経時的な変化に影響を与えることが分かった.また共振周波数の高周波側へのシフトの挙動は,光学顕微鏡を用いた粒子径観察の結果とよい相関を示し,本法がエマルションの分離進行によって生じるクリーミングを鋭敏に検出していることが明らかになった.一方,W/O型エマルションや市販のエマルション製品に対する測定においても経時にともなう共振周波数の変化が観測された.このことから本法はO/W型エマルションだけではなく,W/O型エマルションや多成分系エマルションの安定性評価においても適用可能であることが明らかになった.
著者
杉谷 嘉則 影島 一己 西本 右子 天野 力
出版者
神奈川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

高周波分光法は、物質と水の相互作用の変化を鋭敏に捉えることを可能にする、われわれ独自の手法である。すなわち、物質の状態変化に伴う誘電率変化を共振周波数の変化として検出する手法である。また、エマルションとは、界面活性剤の力により、水中の油滴、逆に油中の水滴の形で一様に分散する系をいう。食品(牛乳)、化粧品(ヘアーオイルなど)、農薬、塗料、その他多くの産業分野に用いられている。これらエマルションは熱力学的に不安定な系である為、時間経過によりいずれ相分離を生じる(別の言い方では、劣化する)。これらの相分離過程を高周波分光法により観測することに成功した。実際には、多種類のエマルションを合成し、その劣化過程を高周波スペクトルのピーク位置の移動という形でとらえることができた。結果の一例を示すと、エマルション合成時に、界面活性剤の割合を多くしたものは、時間経過に対する劣化が緩やかに進行することが判明した。また、高温で保存したエマルションは、劣化がより速やかに進行することも判明した。これらは経験的には自明として知られていることであるが、目視や他法では観測し得ないような微小の変化も本法で鋭敏にとらえることができた。