著者
武岡 健次 七堂 大学 山田 保隆 河村 廣幸 岡田 光郎 小柳 磨毅 澤田 甚一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.71-74, 1995-05-20 (Released:2007-03-29)
参考文献数
7
被引用文献数
4 2

パーキンソン病患者が,姿勢保持障害により後方に転倒することはよく知られている。しかし,姿勢保持障害の定量的な評価は困難であり,転倒危険性の予測は医師・療法士などの経験により判断されていた。そこで我々はパーキンソン病患者の転倒危険性を定量的に評価するため,傾斜刺激に対する立位保持能力を測定した。対象はパーキンソン病患者14例(男性7例,女性7例)で,Yahrの重症度分類(stage)はIIが3例,IIIが8例,IVが3例であった。方法は,対象をTilt tableの足底面に起立させ,足底面を後方へ傾斜させた際,立位保持できた最大傾斜角度を測定した。測定時,側方よりビデオ撮影を行い,開始立位時および後方傾斜により後方に倒れた時の股関節の角度変化を算出した。 パーキンソン病患者の立位保持可能な最大傾斜角度は健常人に比べて,有意に小さかった。また,パーキンソン病患者内ではIV群が,II・III群より小さい傾斜角度で後方に倒れる傾向がみられた。最大傾斜角度が6°以下のものは,全例が転倒経験を有していた。パーキンソン病患者のIV群は開始立位時において大きく前屈姿勢をとっていたが,逆に後方転倒時までの股関節の角度変化は小さく,開始立位に近い状態で後方に転倒していた。 これらの結果から後方傾斜刺激による姿勢保持障害の測定が,転倒危険性を予測する定量的な評価方法として有効であると考えられる。