著者
武村 俊介 松澤 孝紀 木村 武志 利根川 貴志 汐見 勝彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

本研究では,紀伊半島沖で発生する浅部超低周波地震のモーメントテンソルインバージョンを行った.南海トラフで発生する浅発地震では,厚く堆積した海洋堆積物(以下,付加体)が表面波の励起および伝播に大きな影響を与える(例えば,Furumura et al., 2008; Nakamura et al., 2015; Guo et al., 2016).そこで,付加体内の地震波速度構造モデルはTonegawa et al. (2017)による推定結果により構築し,付加体下の構造は全国1次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)としたTakemura et al. (2018)の3次元不均質構造モデルを採用し,差分法による地震動シミュレーション(Furumura and Chen, 2004; Takemura et al., 2015)によりGreen関数を評価した.Green関数計算のための震源をフィリピン海プレート上面に0.1°毎に設定し,震源時間関数は継続時間t秒のcosine関数を仮定した.陸域に敷設されたF-netの速度波形に周期20-50秒のバンドパスフィルターをかけ,モーメントテンソルインバージョンを行った.観測波形の再現性をVariance Reductionで評価し,Variance Reductionが最大となる解を探索し,浅部超低周波地震のモーメントテンソル,継続時間,セントロイド位置および時刻を推定した.手法の妥当性を検討するため,海底地震計記録を用いて推定されたSugioka et al (2012)の浅部超低周波地震に対し,本手法を適応した.本研究のモーメントテンソルインバージョンは,使用した帯域や手法の違いにより継続時間やセントロイド時刻に違いがあるが,Sugioka et al. (2012)と同様のセントロイド位置に同様な低角逆断層が最適解として得られた.一方で,全国1次地下構造モデルを仮定してモーメントテンソルインバージョンを行ったところ,異なる位置に高角逆断層が最適解として得られた.以上のことから,海底地震計の記録がない場合でも,適切な3次元不均質構造を仮定することで正確なモーメントテンソル解が得られることがわかり,DONETなどの海底地震計敷設以前の浅部超低周波地震の活動評価の高度化に資すること可能であると考えられる.謝辞F-netの広帯域速度波形記録を使用しました.スロー地震学のスロー地震データベースよりSugioka et al. (2012)のカタログをダウンロードしました.地震動計算には地球シミュレータを利用しました.
著者
武村 俊介 汐見 勝彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

近年、GMS(Aoi and Fujiwara, 1999)やOpenSWPC(Maeda et al. 2017)などの地震動シミュレーションコードの発展が目覚ましい。それに加え、全国1次地下構造モデル(Koketsu et al. 2012)やMatsubara et al. (2008)など、日本列島の3次元地下不均質構造についても多くのモデルが提案されており、現実的な地下構造を用いた地震動伝播シミュレーションは身近なものとなった。しかし、3次元地下不均質構造の地震波動場への影響は未知な点が多く、特に沈み込む海洋プレート周辺の地震の地震波伝播を考える上ではその影響を把握することが喫緊の課題となる。そこで、本研究では南海トラフとその周辺で発生する地震の地震動伝播シミュレーションから、観測地震波動場に見られる3次元地下不均質構造の影響について紹介する。地震動シミュレーションは並列差分法(Furumura and Chen, 2004; Takemura et al., 2015)により実行し、3次元地下構造モデルは全国1次地下構造モデルを利用した。512×640×153.6 km3の計算領域を水平方向0.125 km、鉛直方向0.1 kmで離散化し、周期の3秒以上の地震動について、地球シミュレータ1024ノードを用いて計算を行った。シミュレーションの対象とした地震は、2016年4月1日の三重県南東沖の地震(Event A)、2016年10月21日の鳥取県中部の地震(Event B)と2016年11月19日の和歌山県南部の地震(Event C)の3つである。それぞれ、プレート境界地震、地殻内地震とスラブ内地震であり、発震機構としてF-netのMT解を用いた。陸域の観測網内で発生した地震(Event BとEvent C)は、観測地震動の再現性が非常に高く、仮定した震源モデルおよび構造モデルが妥当であると考えることができる。一方で、海域で発生したEvent Aは、観測波形の再現性が低い。これは観測網外で発生した地震の震源解の推定精度が低いことと、海域の構造モデルチューニングが未だ不十分であることが原因と考えられる。発表では、観測波形の再現性を詳細に紹介しつつ、広帯域地震波動場再現のためのモデル化手法と課題を議論する。謝辞Hi-net/F-netおよびDONETの速度波形記録を使用しました.地震動計算には地球シミュレータを利用しました.