著者
武村 真治 橘 とも子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.226-230, 2009-09
被引用文献数
1

国立保健医療科学院では,新型インフルエンザ対策を含む健康危機管理に関連する研修として,保健所長等の保健所管理職員の健康危機管理対応の実践的能力の向上を目的とした「健康危機管理保健所長等研修(実務編)」,健康危機における保健所の組織管理及び意思決定に関する高度な実践的能力の向上を目的とした「健康危機管理保健所長等研修(高度技術編)」,感染症等の集団発生の原因究明調査に必要な実地疫学(field epidemiology)の技術の習得を目的とした「感染症集団発生対策研修」,ウイルス感染症の検査診断法の技術の習得を目的とした「ウイルス研修」及び「新興再興感染症技術研修」が実施されている.これらの短期研修では,早くから,新型インフルエンザを重要な分野として位置づけ,厚生労働省,地方自治体,企業などの担当者による講義,新型インフルエンザに特化した実地疫学の演習,新型インフルエンザの検査診断法(PCR法)の実習などを導入,実施してきた.今後は,今回の新型インフルエンザに対する国,地方自治体等の対応を詳細に分析した上で,新型インフルエンザ対策に必要な能力(コンピテンシー)を抽出し,それらに適合した教材及び演習プログラム(事例分析,シミュレーション等)を開発・実施し,より高度な実践対応能力の向上を図る予定である.人材育成を通じて保健所,都道府県を支援することは国の責務であり,地域健康危機管理の拠点である保健所等の職員の能力・資質の向上のための短期研修を継続的に実施してきた実績をもつ国立保健医療科学院の果たす役割はますます大きくなっていくと考えられる.今後も,新型インフルエンザを含む健康危機管理に関する研修の充実を図り,都道府県や保健所を積極的に支援していく必要がある.