著者
橘 とも子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.473-483, 2017

全ての国民が,障害の有無に拘わらず,「相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会において,誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け,利用できる」ための情報基盤整備における課題を抽出し,情報アクセシビリティ向上に向けた提言を行うことを目的とした.厚生労働科学研究費補助金(障害者政策総合研究事業(身体・知的等障害分野))「意思疎通が困難な者に対する情報保障の効果的な支援手法に関する研究(研究代表者:橘とも子)」において開催した,シンポジウム「意思疎通支援の架け橋づくり.多様なコミュニケーション障がいへの支援手法を探る.」における発言から,地域の情報アクセシビリティ向上に向けて抽出しえた課題は,「『当事者主体』への意識変革や多様な障害支援方法の,医療従事者・保健福祉介護サービス提供者を含む地域住民への普及啓発の必要性」「当事者目線の調査・情報の必要性」「情報サイト構築等による先駆的取組みの自治体相互における共有促進」「妥当で効率的・効果的な『機器』『人』『ソフト』の一元的支援体制の構築促進」等であった.<br> 著者らは近年,障害保健福祉政策の推進を見据えて,「障害保健福祉施策を外傷予後の観点で再評価」するための研究に取り組んできた.近年の,地域における障害者の保健・医療・福祉・介護を取り巻く政策動向を鑑みると,地域共生社会における情報アクセシビリティ向上には,「エビデンスに基づく障害保健福祉施策の推進」が不可欠であり,障害者基本法の「情報の利用におけるバリアフリー化」には今後,「主体的健康づくりに必要な情報コンテンツの充実」を加えるべきと思われた.その実現に向け,本稿では,臨床効果情報における障害者データベースの構築を提案した.
著者
武村 真治 橘 とも子
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.226-230, 2009-09
被引用文献数
1

国立保健医療科学院では,新型インフルエンザ対策を含む健康危機管理に関連する研修として,保健所長等の保健所管理職員の健康危機管理対応の実践的能力の向上を目的とした「健康危機管理保健所長等研修(実務編)」,健康危機における保健所の組織管理及び意思決定に関する高度な実践的能力の向上を目的とした「健康危機管理保健所長等研修(高度技術編)」,感染症等の集団発生の原因究明調査に必要な実地疫学(field epidemiology)の技術の習得を目的とした「感染症集団発生対策研修」,ウイルス感染症の検査診断法の技術の習得を目的とした「ウイルス研修」及び「新興再興感染症技術研修」が実施されている.これらの短期研修では,早くから,新型インフルエンザを重要な分野として位置づけ,厚生労働省,地方自治体,企業などの担当者による講義,新型インフルエンザに特化した実地疫学の演習,新型インフルエンザの検査診断法(PCR法)の実習などを導入,実施してきた.今後は,今回の新型インフルエンザに対する国,地方自治体等の対応を詳細に分析した上で,新型インフルエンザ対策に必要な能力(コンピテンシー)を抽出し,それらに適合した教材及び演習プログラム(事例分析,シミュレーション等)を開発・実施し,より高度な実践対応能力の向上を図る予定である.人材育成を通じて保健所,都道府県を支援することは国の責務であり,地域健康危機管理の拠点である保健所等の職員の能力・資質の向上のための短期研修を継続的に実施してきた実績をもつ国立保健医療科学院の果たす役割はますます大きくなっていくと考えられる.今後も,新型インフルエンザを含む健康危機管理に関する研修の充実を図り,都道府県や保健所を積極的に支援していく必要がある.