著者
武田 貴成
出版者
京都大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2017-04-26

本研究課題では、亜鉛欠乏による炎症のメカニズム解明を目指し、主に細胞外アデニンヌクレオチド代謝に注目して研究を進めた。具体的には、当該年度実施した研究により、主に①in vitro系において亜鉛欠乏培養が細胞外アデニンヌクレオチド分解酵素の活性を大きく減弱させることを確かめ、研究課題の仮説を裏付ける基礎を固めた。さらに②この酵素活性の低下によって、実際にアデニンヌクレオチド分解まで影響するのかを調査するため、新たにHPLCを利用した解析系を立ち上げ、亜鉛欠乏培養により正常なATP、ADPの除去、およびアデノシン産生が大きく阻害されていること見出した。これに加え、③in vivo解析においても、低亜鉛食の給餌がin vitroの結果と同様に各酵素活性の低下、およびそれに伴った細胞外アデニンヌクレオチド分解の減退を引き起こすことを見出した。このような当該年度の研究により、亜鉛欠乏によって正常な細胞外アデニンヌクレオチド代謝が妨害されるという仮説を裏付ける解析結果を得た。これにより今後の研究の方針が決定したほか、これまでに亜鉛栄養と細胞外アデニンヌクレオチド代謝との関連を示した報告は知られていないことから、本解析結果は新規性・独立性という点において大きな意義を持つ。また、今回樹立した各酵素活性の測定系、およびHPLCによる定量系は簡便且つ正確であり、今後本研究課題を遂行していく上でも有用な手法となることが期待される。