著者
橋本 彩子 神戸 大朋
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.836-841, 2012 (Released:2017-12-15)
参考文献数
28

日本人の食生活については,献立の欧米化,インスタント食品化が進み,最近では伝統的日本食の価値が見直されている。現代日本人の食事では,タンパク質,脂質の摂取が十二分となっているが,金属元素等の微量成分が不足しがちであることが明らかになってきた。本解説の著者らは,人体における亜鉛(Zn)の重要性に着目し,Znの栄養研究を実施してこられた。その中で,味噌等の発酵食品の成分がZn吸収促進効果を持つことを示された。ここでは,亜鉛栄養研究の現状を概観していただき,発酵食品の成分への期待を含めて,今後の研究の展望をわかりやすく解説していただいた。
著者
神戸 大朋 片山 高嶺 高橋 正和
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)は、過去40 年にわたり急激に増加した疾患として知られる。IBDの発症や憎悪化のメカニズムの一つとして、「亜鉛欠乏」が「腸型アルカリフォスファターゼ(IAP)の活性消失」を引き起こすことがあげられることを、細胞及び動物レベルで証明し、IBDの予防と治療に亜鉛の活用が実践的であることを示す。さらに、亜鉛の吸収効率を上昇させる食品因子を探索し、本因子が実際にIBDの予防や治療に有効に作用することを実証する。亜鉛を充足させる食の提案は、医薬や食品など幅広い分野の応用に新しい展開をもたらすものと期待される。
著者
橋本 彩子 神戸 大朋
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.107, no.11, pp.836-841, 2012 (Released:2013-10-08)
著者
神戸 大朋
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第42回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.W2-2, 2015 (Released:2015-08-03)

メタロチオネイン(MT)は細胞質に局在し、有害金属毒性の軽減などに働く防御タンパク質として知られるが、亜鉛ホメオスタシス維持にも重要な役割を果たす。近年、このメタロチオネインの働きが、亜鉛トランスポーターの働きと密接に連携していることが明らかにされてきたが、最近、我々は両者の細胞質内亜鉛代謝における協調的な機能が、分泌型亜鉛要求性酵素の活性化に不可欠であることを見出した。 分泌型亜鉛要求性酵素の一つである組織非特異的アルカリフォスファターゼ(TNAP)は、小胞体やゴルジ体といった分泌経路に局在する亜鉛トランスポーター(ZnT5-ZnT6ヘテロ二量体とZnT7ホモ二量体)によって膜輸送された亜鉛を受け取り、活性化される。この過程において、それぞれの二量体は、細胞質内で受け渡された亜鉛を分泌経路内腔に送り込むが、その分子レベルでの知見は、これまで全く得られていなかった。我々は、MT欠損株において、細胞質亜鉛が上昇しているにも関わらず、TNAPの活性化が有意に減少していることを見出した。さらに、MTと同時に細胞質亜鉛の恒常性維持に重要なZnT1やZnT4といった亜鉛トランスポーターを欠損させる(3重欠損株)と、TNAP活性はほとんど検出されなくなった。この3重欠損株では、細胞質内亜鉛が野生株に比べて大きく上昇しているにも関わらず、TNAPを活性化できなかったが、過剰の亜鉛を添加することによって細胞質亜鉛濃度を著しく上昇させると、TNAP 活性は上昇した。また、3重欠損株におけるZnT5-ZnT6ヘテロ二量体とZnT7ホモ二量体の機能は正常であった。これらの結果は、MTを中心とした細胞質内亜鉛動態制御が、ZnT5-ZnT6やZnT7二量体を介したTNAPの活性化に機能することを示しており、MTによる細胞質の亜鉛代謝の厳密な制御が、分泌経路の亜鉛代謝にも重要な役割を果たすことを示している。
著者
駒井 三千夫 後藤 知子 大日向 耕作 神戸 大朋 真柳 祐希 白川 仁
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.138, no.8, pp.1011-1016, 2018-08-01 (Released:2018-08-01)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

We investigated the role of zinc in regulation of food intake using male SD rats during early-stage of zinc deficiency (the 3rd day of the feeding) without decreased zinc concentrations in tissues (hypothalamus and liver). As a result, we found that orally but not intraperitoneal administered zinc stimulates food intake in the short-term zinc-deficient rats. The mRNA expressions of hypothalamic peptides, such as orexin (OX) and neuropeptide Y (NPY), were increased after oral administration of zinc to increase food intake. Pretreatment with an antagonist for the NPY Y1 receptor or the orexin OX1 receptor blocked orexigenic activity by zinc administration. The stimulation of food intake by oral administration of zinc was also abolished by vagotomy. Taken together, our results indicate that zinc stimulates food intake in short-term zinc-deficient rats through the afferent vagus nerve followed by activating the hypothalamic peptide associated with food intake regulation. This study showed the first evidence that gastrointestinal zinc signal is indispensable for the food appetite induction in the experimentally anorexigenic rat. However, since it has not yet been clarified the mechanism involved in zinc sensing by the epithelial membrane of the gastrointestinal tract, further detailed investigations are necessary.
著者
神戸 大朋
出版者
一般社団法人日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.92-102, 2013 (Released:2013-05-29)
参考文献数
100
被引用文献数
11 9

In recent years, a number of mammalian zinc transporters have been molecularly characterized. This has brought about major advances in our understanding of the tight regulation of cellular zinc homeostasis and the pivotal roles zinc transporters play in a variety of biological events. Mammalian zinc transporters are classified into two families: the ZRT, IRT-like protein (ZIP) family and the Zn transporter (ZnT) family. The ZIP family consists of 14 members and facilitates zinc influx into the cytosol from the extracellular and intracellular compartments. The ZnT family consists of 9 members and facilitates zinc efflux from the cytosol to the extracellular and intracellular compartments. Coordinated zinc mobilization across the cellular membrane by both transporter families is indispensable for diverse physiological functions. In this review, the features of the ZIP and ZnT families are briefly reviewed from the perspective of zinc physiology, with emphasis on recent progress.
著者
神戸 大朋
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.104, no.1, pp.37-40, 2009 (Released:2016-01-18)
参考文献数
16

醸造において,水の問題は非常に重要視される。例えば,宮水の特徴は,カリウムとリン酸にあるといわれ,酵母の発酵性とカリウムやリン酸の関係については多く研究や解析がなされている。これらの研究に加え,亜鉛もまたアルコール発酵に重要であるということが,周辺の分子メカニズムとともに証明されてきている。亜鉛は生物にとって必須の元素であり,酵素活性や遺伝子発現制御因子の活性など多くのタンパク質の活性に関与しているが,アルコール発酵系の酵素にも亜鉛を要求するものがある。亜鉛と本酵素は単に酵素活性という点だけでなく,遺伝子発現も含めてドラスティックに相互に関係していることが明らかとなってきた。今回,亜鉛とアルコール発酵系の巧妙な関係について解説をしていただいた。
著者
福中 彩子 神戸 大朋
出版者
日本生化学会
雑誌
生化學 (ISSN:00371017)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.30-34, 2010-01-25
被引用文献数
2