著者
村上 真基 武舎 孝之 栗田 直美 塚田 修
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.417-422, 2007-05-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
15

背景 : 糖尿病合併症予防の治療指標は糖尿病学会ガイドラインよりHbA1c : 6.5%未満とされているが, 血液透析症例では赤血球寿命短縮などのためHbA1cは指標となりづらく, グリコアルブミン (GA) が赤血球寿命やエリスロポエチン (rHuEpo) 投与の影響を受けず良い指標になると報告されている. われわれはrHuEpo投与量補正を行ったHbA1c目標値は透析症例における長期予後予測の指標となりうるかどうかを検討した. 方法 : 糖尿病血液透析症例51例に対し1か月ごとに延べ290回HbA1c, GAを測定した. HbA1c, GA, rHuEpo投与量の相関より, rHuEpo投与量補正を行ったHbA1c目標値を設定した. 2000年1月以降の糖尿病血液透析症例96例のHbA1c測定値とrHuEpo補正HbA1c目標値について, 治療指標を基準とした生存解析を行って両者を比較した. 結果 : HbA1c : 6.5%を基準とすると, 回帰分析によりrHuEpo非投与症例のGAは22.8%が基準値となった. この値に基づくとrHuEpo投与量3,000 [IU/week] 以下ではHbA1cは5.7%, 6,000以下で5.5%, 9,000以下で5.2%が治療の目標値となった. いずれの群でもp<0.0001であった. HbA1c測定値における生存解析では生存率に有意差を認めなかったが, 補正後のHbA1c目標値未満にとどまる症例では有意に生存率が良好であった. 結論 : 糖尿病血液透析症例であっても, rHuEpoによる補正を加えれば, HbA1cは長期予後を予測する鋭敏な治療目標として使用可能で, 臨床現場でも扱いやすい指標になると考えられた.