著者
大石 恵子 村上 真基 綿貫 成明 飯野 京子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.245-250, 2018 (Released:2018-08-16)
参考文献数
12

【目的】緩和ケア病棟併設のない病院の療養病棟での緩和ケアの実態を明らかにし,療養病棟における緩和ケア推進のための課題を検討する.【方法】東京都の211の療養病棟管理者へ無記名自記式質問紙調査を行った.医療用麻薬の管理と使用実態,緩和ケアに習熟した医師・看護師の存在,がん患者の受け入れ体制,非がん緩和ケアへの認識,療養病棟での緩和ケアにおける困難について質問した.【結果】55施設から回答を得た.89.1%ががん患者を受け入れ医療用麻薬も使用可能だが,緩和ケアに習熟した医師がいる施設は32.7%であった.7割以上が非がん緩和ケアを重要視し取り組んでいた.緩和ケアに習熟した医師のいない施設では,専門知識・技術,麻薬投与,苦痛緩和についての困難感が有意に高かった.【結論】多くの療養病棟でがん・非がん緩和ケアに取り組みつつ,困難感も抱えている.緩和ケアに習熟した医師の存在は困難感を低減させる可能性が示唆された.
著者
村上 真基 武舎 孝之 栗田 直美 塚田 修
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.417-422, 2007-05-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
15

背景 : 糖尿病合併症予防の治療指標は糖尿病学会ガイドラインよりHbA1c : 6.5%未満とされているが, 血液透析症例では赤血球寿命短縮などのためHbA1cは指標となりづらく, グリコアルブミン (GA) が赤血球寿命やエリスロポエチン (rHuEpo) 投与の影響を受けず良い指標になると報告されている. われわれはrHuEpo投与量補正を行ったHbA1c目標値は透析症例における長期予後予測の指標となりうるかどうかを検討した. 方法 : 糖尿病血液透析症例51例に対し1か月ごとに延べ290回HbA1c, GAを測定した. HbA1c, GA, rHuEpo投与量の相関より, rHuEpo投与量補正を行ったHbA1c目標値を設定した. 2000年1月以降の糖尿病血液透析症例96例のHbA1c測定値とrHuEpo補正HbA1c目標値について, 治療指標を基準とした生存解析を行って両者を比較した. 結果 : HbA1c : 6.5%を基準とすると, 回帰分析によりrHuEpo非投与症例のGAは22.8%が基準値となった. この値に基づくとrHuEpo投与量3,000 [IU/week] 以下ではHbA1cは5.7%, 6,000以下で5.5%, 9,000以下で5.2%が治療の目標値となった. いずれの群でもp<0.0001であった. HbA1c測定値における生存解析では生存率に有意差を認めなかったが, 補正後のHbA1c目標値未満にとどまる症例では有意に生存率が良好であった. 結論 : 糖尿病血液透析症例であっても, rHuEpoによる補正を加えれば, HbA1cは長期予後を予測する鋭敏な治療目標として使用可能で, 臨床現場でも扱いやすい指標になると考えられた.
著者
村上 真基 大石 恵子 綿貫 成明 飯野 京子
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.219-227, 2018 (Released:2018-07-19)
参考文献数
21

【目的】療養病棟スタッフへの意識調査を通して,療養病棟緩和ケアの課題について調査した.【方法】介護職等を含むスタッフを対象に無記名自記式質問紙調査を行い,WHO緩和ケア定義の認知度,療養病棟緩和ケアの必要性と実現性,課題等について数字評価スケール(0:まったくそう思わない〜10:非常にそう思う)で尋ねた.【結果】30施設541名(医療職387名,その他154名)から回答を得た.緩和ケア定義を「知っている」は医療職56%,他職種45%,がん緩和ケアの必要性がある8.5±2.1(平均値),実現性がある6.8±2.5,非がん緩和ケアの必要性がある8.4±2.0,実現性がある7.0±2.2であった.がん・非がんともに,苦痛緩和・家族ケアは重要である,人員不足である,時間のゆとりがない等が8点以上であった.【結論】緩和ケアの必要性や重要性を高く認めつつも,多くの課題と困難感の存在が明らかとなった.
著者
村上 真基 大石 恵子 荒井 進 島田 宗洋
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.109-115, 2016 (Released:2016-02-03)
参考文献数
11
被引用文献数
2

【目的】療養病棟でがん患者の緩和ケアを行った成績を検討した.【方法】2010年4月~2014年12月に当院医療療養病棟へ入院した194名について,医療用麻薬(麻薬)不使用期(2012年3月まで:前期)と麻薬使用期(2012年4月以降:後期)の2群に分け,患者背景,入院期間,転帰,麻薬投与,苦痛緩和等について後方視調査した.比較のため緩和ケア病棟(PCU)の入院動態を調査した.【結果】前期74名中がん患者は16名(22%),後期120名中がん患者は79名(66%)と後期でがん患者の割合が3倍に増えた(p<0.01).後期の入院期間は1/2(144日)に短縮(p<0.01),死亡退院率(78%)は増えた(p<0.05).後期はがん患者の半数以上(57%)に麻薬を投与し,疼痛緩和は良好であった.後期の期間はPCU入院患者も増加した.【結語】療養病棟はPCUと連携してがん緩和ケアを行える可能性が示唆された.
著者
村上 真基 荒井 進 稲葉 裕
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.57-62, 2018 (Released:2018-02-20)
参考文献数
20

【目的】血液検査のみで構成されたがん患者用生物学的予後スコア(Biological Prognostic Score第2版)を終末期非がん患者の予後予測に応用することの適応と限界を検討した.【方法】後ろ向きに非がん入院患者のコリンエステラーゼ,血中尿素窒素,白血球数より予後スコアを算出し,カットオフ値で3群に分け,予測精度分析,生存解析,回帰分析を行った.【結果】がんと同じカットオフ値・予測生存期間における非がん患者204名の予後予測精度は,生存期間3週で正診率79%,9週で63%であった.特異度,陰性的中率は精度が高く,感度,陽性的中率は低かった.生存解析では3群間の識別は有意(p<0.05)であったが,回帰分析における回帰係数は有意ではなかった(p=0.43).【結論】非がんに対する本スコアを用いた予後予測では,予後良好の場合の予測精度は高く,慎重に用いれば臨床使用も可能であると示唆された.