著者
比良 徹
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.215-220, 2012 (Released:2012-10-26)
参考文献数
24

本研究では,腸上皮に散在する消化管内分泌細胞が,管腔内の栄養素を認識して消化管ホルモンを分泌する機構の解明と,食品ペプチドによる消化管ホルモン分泌を介した食欲抑制,血糖上昇抑制の確立を目的とした。膵酵素分泌,満腹感誘導等の作用を持つコレシストキニン(CCK)の分泌機構に関して,カルシウム感知受容体が,フェニルアラニンや各種食品ペプチドの受容体としてCCK分泌に関与することを見いだした。トウモロコシ由来のペプチドが,グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)の分泌を促進し,さらに血中ジペプチヂルペプチダーゼ-IV活性を低下させることで,GLP-1の作用を高めて,血糖上昇が抑制されることをラットにおいて示した。これらの研究成果は,消化管での栄養素認識機構の一部を明らかにし,食品成分による消化管ホルモン分泌コントロールを介した,メタボリック症候群の予防,病態改善へ応用しうるものと考えられる。